『18歳までに子どもにみせたい映画100』
著・有坂 塁
ティーンネイジャーの子を持つ親としては、タイトルから引き込まれてしまう。自分自身、多感な時期にたくさんの映画を観て育ってきた思い出があるから、なおさらだ。著者の有坂塁さんは、移動映画館「キノ・イグルー」館長であり、本誌の映画特集やイベントで何度もお世話になった人。
おすすめの映画という前提はあるが、評論家然とした知識の押し付けや、作品へのダメ出しは皆無。400文字弱の本文には必ずと言っていいほど有坂さんの映画愛溢れる意見やおすすめポイントが含まれていて、それが100本分である。この本はそれだけでバイブルになり得るでしょう。
「3歳の愛娘の将来を思って、世界中の子どもたちに向けて」という前書きは彼の人柄そのものだ。“あぁ、俳優の柄本明さん一家がそうだったように、家庭内が映画の話で溢れていたら理想だなぁ”と思いながら読み進める。
総合芸術としての映画に対して、心からのリスペクトを捧げているがゆえに、映画の楽しみ方を余すところなく文章にちりばめてくれているし、人間という生き物の愛おしさにも触れていく有坂さんの目線が、とてもあたたかくて心地よいのです。