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ブルータス時計ブランド学 Vol.38 〈カール F.ブヘラ〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第38回は〈カール F. ブヘラ〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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長い販売経験でたどり着いた、独創的な時計製作

ブランド名は、創業者の名カール・フリードリッヒ・ブヘラに由来する。彼が1888年にスイス・ルツェルンに開業した時計宝飾店は、その後「ブヘラ」の名で欧州各地に店舗を増やし、今ではアメリカにも進出。世界屈指の高級時計店として、時計ファンの間では知られた存在である。

早くから時計修理部門を本店に置き、1919年からはオリジナルウォッチの製作にも着手。また名だたる高級時計メゾンとのコラボモデルも、数多く製作してきた。そして満を持して2001年、独立した時計ブランドを〈カール F.ブヘラ〉の名で設立するに至った。

130年以上の販売経験を通じ、時計の真の価値はムーブメントにあると知る〈カール F.ブヘラ〉による2つのファーストモデルは、6つの機構を統合したり、3つタイムゾーンの時刻を表示できるなど、独創性に満ちていた。そして2008年には、早くも自社製ムーブメントの開発に成功。それもまたムーブメントの外周で回転するリング状のローターがゼンマイを巻き上げる、ペリフェラル式自動巻き機構の実用・量産化に世界で初めて成功した、独創的な設計であった。

また汎用ムーブメント採用のクロノグラフであっても、さまざまな付加機能を与え、機械的な価値を高めているのが、〈カール F.ブヘラ〉の矜持。自社製ムーブメント開発は、その後もバリエーションを増やし続け、2018年にはトゥールビヨンを実現。その設計もまた、トゥールビヨンキャリッジを外周からボールベアリングで支えるペリフェラル式で、独創性を放っている。

さらに2021年にはそれにミニッツリピーターを組み合わせた超複雑機構を発表。〈カール F.ブヘラ〉は、極めて短期間で実力派ウォッチメーカーとしての地位を確立するに至った。

【Signature:名作】マネロ ペリフェラル

シーンを選ばない、上質なクラシカルモダン

マネロ ペリフェラル

多彩な複雑機構をラインナップするフラッグシップコレクションからの、スタンダードモデル。元来はクラシカルな2針+スモールセコンドを、ホワイト×ブラックの明確な2トーンで、モダナイズした。

楔形の植字インデックスとドーフィン型の針で、シャープな印象を加味。ビジネスシーンでも休日のカジュアルにも似合う、オールマイティな一本に仕立て上がった。ペリフェラルローター採用の自社製自動巻きCal.CFB A2050を搭載。COSC認定クロノメーターを取得した高精度で、機械的な魅力も高い。ブレスレットは、工具なしで交換が可能だ。

径40.6mm。自動巻き。SSケース。1,331,000円。

【New:新作】マネロ セントラルカウンター

機構とカラーリングで個性を主張

マネロ セントラルカウンター

クールなブルーとブラックの2トーンダイヤルが、新鮮に目に映る。クロノグラフの秒・分の各積算計(カウンター)針がダイヤルセンターの時分針と同軸に設置していることが、モデル名の由来だ。

2つのインダイヤルは右がスモールセコンド、左が24時間表示。汎用ムーブメント採用のクロノグラフであっても、独創性が光る。硬いDLCコーティングで黒に染めたベゼルには、平均速度が測定できるタキメーターを刻み、レーシィな雰囲気に装った。

径42.5mm。自動巻き。SSケース。1,353,000円。

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