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ブルータス時計ブランド学 Vol.37〈ラドー〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第37回は〈ラドー〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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高硬度に挑み続ける、マスター・オブ・マテリアル

〈ラドー〉の歴史は、1917年に誕生したムーブメント会社「シュルップ・アンド・カンパニー」に始まる。やがて時計製造にも着手し、1957年に初めて〈ラドー〉とのブランド名を冠した「ゴールデンホース」が誕生する。この時、今日まで使われる、ダイヤル上で回転して自動巻きであることを示す、錨のロゴも初採用された。

当時すでに100年を超える歴史をもつ老舗が少なくなかったスイス時計業界において、後発組であった〈ラドー〉は、他社と明確に差別化できる商品開発を模索した。着目したのは、ケース素材。1962年に登場した「ダイヤスター」は、初めて耐傷性を主眼として開発されたモデルとして、時計史にその名を残す。ケースに用いた素材は、超硬メタルの一つ、炭化タングステン合金。ステンレススティールよりもはるかに硬く傷付きにくく、また個性的な楕円のフォルムとも相まって、世界的な大ヒットとなった。

1983年、SMHグループ(現スウォッチ・グループ)傘下となった〈ラドー〉は、以降、新素材開発で業界をリードしていく。1986年にはブレスレットをセラミック製とした「インテグラル」を発表。1990年にはケースとブレスレット、リューズまでもセラミックで設えた「セラミカ」を生み出した。これらの商業的な成功により、〈ラドー〉は、セラミックウォッチのトップランナーとなった。

その後も素材開発は推進され、メタリックな質感のシルバーや、ローズゴールドカラーのセラミックを実現。またグリーンやオレンジ、ピンクといった多彩なカラーリングもかなえている。さらに製造技術においても、金型による射出成型をいち早く導入。他社を圧倒する超精密成型によって〈ラドー〉のセラミックウォッチは、より美しく進化を続ける。

【Signature:名作】ダイヤスター オリジナル

新素材で蘇ったブランドのレジェンド

ダイヤスター オリジナル

ハイテク素材ウォッチの嚆矢となった「ダイヤスター」を特徴づける近未来的な流線形のベゼルを、メタリックな質感をもった独自のセラミック素材「セラモス」で再現。ダイヤルは2方向のブラッシュ仕上げを組み合わせ、さらにサファイアクリスタルにはストライプのファセット加工を施して、表情豊かにオリジナルのデザインを再解釈した。

6時位置に縦に並べたデイデイト(日・曜日)表示が、ユニーク。搭載する80時間のロングパワーリザーブを誇るCal.R764は、ヒゲゼンマイに新合金ニバクロンを採用し、耐磁性にも優れる。

径38mm。自動巻き。セラモス+SSケース。229,900円。

【New:新作】キャプテンクック ハイテクセラミック スケルトン

ハイテク素材とスケルトンとの融和

キャプテンクック ハイテクセラミック スケルトン

「ダイヤスター」と同じ1962年に誕生したマリンウォッチ「キャプテン クック」の最新作。ケースとブレスレットには、白いセラミックをプラズマ処理し炭化ジルコニウム皮膜を形成した独自素材を採用する。

ダイヤルはサファイアクリスタル製で、スケルトナイズしたCal.R808の全容を透かし見せた。モデルを象徴する内側にスロープする逆回転防止ベゼルのヘアライン仕上げは、明確で力強い。

径43mm。自動巻き。プラズマハイテクセラミックケース。696,300円。

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