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信頼できるボトルショップ。地域を活性化する一杯を提供!大阪〈MOTHER TREE〉

今、クラフトビールを扱うボトルショップが、存在感を増している。ヨーロッパ、北米、日本各地から選りすぐり。流行りや稀少性によらず、ブルワリーの歴史や背景、得意なスタイルなど、一本に込められたストーリーを語り、薦めてくれる、醸造家たちの代弁者。彼らがビールに注ぐ情熱の、源泉に迫る。

初出:BRUTUS No.944「ビールについて語らせろ!」(2021年8月1日発売)

photo: Kunihiro Fukumori / text: Kaori Funai

語る人:代表・谷和

MOTHER TREE(大淀/大阪)

徹底した管理の下、地域を活性化する一杯を

関西クラフトビール界を牽引し続けてきたキーパーソンの一人が、〈クラフトビアベース マザー・ツリー〉谷和さん。2012年独立、大阪市内にショップとパブ3店舗を展開。流通から販売、提供までを一貫して手がけ、2018年からは自社醸造も行う。

日本地ビール協会認定のビアジャッジ資格を持つ谷さんには「造り手が目指したビールの味を、正しく世に伝えたい」という強い信念がある。きっかけは、梅田の老舗ベルギービール専門店での修業時代に、ベルギーのデュベル・モルガット社を訪れたときのこと。

「研修でビアサービングに挑みましたが、満足のいかない出来で。その一杯を飲んだオーナーから“僕らの努力が、これでダメになるんだ!”とめっちゃ叱られて……」。開業以来貫くテーマがクオリティ・コントロール(品質管理)だ。

大阪〈MOTHER TREE〉店内
「影響を受けた人が醸した3本と自社醸造の1本です」。

本店に常時ストックされる500種のうち海外ものは8割。ベルギーやドイツの伝統的な造りがなされたものから、北米のマイクロブルワリーの一本まで、世界の最先端をキャッチできる品揃え。それらはセラーと冷蔵庫で緻密な管理がなされているが、谷さんは入荷の前段階から心血を注ぐ。「一度でも常温に置いてしまえば鮮度はガタ落ち」と、流通状況を常に把握。

到着後の試飲チェックは欠かさず「ビアスタイルにあってはならない香りを感じたら、品質向上のためにもインポーターや醸造家に即、伝えます」。さらに、醸造日や輸入日など日を遡ったうえで、質をジャッジ。プロがきっちり管理するからこそ、ビール本来のポテンシャルが味わえるのだ。醸造を始めたことで、「造り手という責任感が加わりました。毎日が挑戦ですね」。

2021年10月には新たな挑戦が形に。本店と醸造所、姉妹店1店舗を統合させた施設が、大淀に誕生し、80坪の店内には醸造所とビアカフェ、ショップを併設。ビール造りは、定番の「CRAFT BEER BASE」、“ビールを知る”がテーマの「CBB Brewing Lab」、“香りを飲む”がテーマの「醸馥(じょうふく)Olfactory works」の3ブランドを展開。また、2階にはセミナースペースも。

谷さんを筆頭に、醸造家たちとの交流や発信にも期待は高まるばかり。「クラフトビールは元来、地域色が強い飲み物。だから地元の人たちとともに育ち、地域が活性化するような場になれば」

海外の最新を伝えながら、地域のクラフトビール文化を掘り下げて。「ビールで鳥肌が立つ経験を、一人でも多くのお客様に感じていただきたい」と熱く語る、谷さんの発信から、目が離せない。