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本屋をはじめる第一歩。棚作りの極意

新しい仕事をはじめる。長い人生、何も仕事は一つに絞ることはない。農業に本屋、コーヒーショップに俳優まで、魅力的な仕事はたくさんある。転職するもよし、副業として掛け持ちするもよし、小さな一歩を踏み出して、広い世界を見てみよう。

photo: Kaori Oouchi / text: Yuriko Kobayashi

教えてくれた人:辻山良雄(〈Title〉店主)

棚を一つ作ってみる。

「個人書店というのは、店主の“情緒”を積み上げていくもの」と、辻山良雄さん。
「情緒」とは「折に触れて起こる様々な思い」という意味だが、つまり、確固たるコンセプトを最初に決めるより、なりゆき任せの方がうまくいくってこと?

「個人の書店というのは仕入れられる本の数が限られるので、セレクトや陳列の仕方には店主の興味関心や、もっと言えば、その人が通ってきた道が表れるものです。

といっても、極私的な展開では商売になりづらいですから、今、社会がどんな状況なのか?その中でお客さんがどんなことを考えているのか?という視点も欠かせません」

本屋〈Title〉店内
辻山さん流の棚作りのテーマは「ジャンルは異なっていても、ゆるやかにつながっているように見える」こと。

客との会話が少ないイメージの本屋だが、辻山さんは店主と客の間には「言葉のないコミュニケーション」があると言う。

「性別、年齢、着ている服など、どんな人がどんな本を選ぶのかを注意深く見ていると、店に通うお客さんの傾向や興味関心がわかってきます。ならばこんなふうに陳列を変えてみようかと試してみる。

時には実際に会話をすることで、お客さんから学ぶことも大いにある。そういうコミュニケーションを介して、“自分の視点”と“社会”“お客さん”の3者の接点を探していくことが大切です」

その練習としておすすめなのが、一般の人でも参加できる「ひと箱古本市」への出店や、書店の棚の一角を借りて本の販売ができる「レンタル本棚」。

「自分でセレクトしてみると、自分の視点がよくわかります。販売することで、社会やお客さんとの接点が生まれますから、それを受けて変更を加えてみる。そこに“情緒”が生まれ、本屋が育っていくんです」

棚を借りることができる書店。

ブックマンション
(吉祥寺)

「本屋をシェアする文化の発信基地」をコンセプトに、一般向けの貸し本棚のサービスを行う。本棚サイズは31×31cm。利用料は3,850円/月で、1冊売れるごとに100円を店に支払うシステム。

ブックショップ トラベラー
(下北沢)

独立書店を応援する〈BOOKSHOP LOVER〉主宰の和氣正幸さんが営む「本屋のアンテナショップ」。棚を借りてひと箱店主になれる。利用料は5,000円〜/月で、売り上げに対するマージンはなし。

BREWBOOKS
(西荻窪)

書店内の棚の一角を借りて本を販売できる「BOOKSELLER CLUB」を展開。利用料は3,000円/月で、売り上げのマージンはなし。イラストや雑貨などの販売も可能(本以外は手数料20%)。