「珍奇シリーズ」からのスピンオフネタを紹介していくBRUTUS.jpの連載として始まったこの企画。まさに今「珍奇鉱物」の第2弾が発売中だが、その特集の巻頭には毎回「ファインミネラル図鑑」なる、鉱物標本を図鑑仕立てで紹介するグラビアページがある。この標本をセレクトするのはいつも大仕事なのだけれど、特集第2弾では「クォーツ(水晶)」をトップにドン!と据えた。
去年の第1弾のときには、まだ未知の鉱物種がたくさんあり、なじみがあるクォーツに注目する余裕がなかったのだが、第2弾では「こんなにも色や形、内包物による表情が豊かな鉱物だったのか!」とその奥深さに強く惹かれたからだ。まさに『水晶に始まり、水晶に終わる』と言われている、その言葉通りに。
先日、この「ファインミネラル図鑑」でも大変お世話になった〈PEANUTS MINERALS〉の代表・亀田和人さんに会い、今年の2月にアメリカ・アリゾナ州で行われた世界最大の鉱物イベントである「ツーソン・ショー」の様子を聞く中で、一番印象に残った標本についてたずねると、こんな答えが返ってきた。
「グウィンデル(ねじれ水晶)ですね」
亀田さんがクォーツを積極的に追いかけているイメージがあまりなかったので意外だったのと同時に、自分の中の“クォーツな気分”とシンクロした。
「今年のショーはまったくコロナの影響を感じさせない盛況ぶりでいろいろ素晴らしい標本があったんですけど、このアントン(Anton Watzl Minerals)のところにあった、インドのグウィンデルが今回のマイ・ベストです。インド産なんですけど、透明感も良く、しっかりねじれたグウィンデルの結晶が母岩に3つ連なっていて、かつ2つはT字にくっついているという見たことのないクオリティだな、と」
クォーツはハイエンドなものは高額になるが、比較的安価でも美しいものが見つかるので、これまでは高額なクォーツを買うより、同じ額を出すならついつい他の石を買っていた、という亀田さん。それでもこの写真のグウィンデルは別格だった。
「その分価格も素晴らしかったので、結局手が出なかったんですが、今思うと頑張って買っておいたら良かったかなぁ、と後悔してたり……」
今回の特集の「スイス・アルパインミネラル採掘記」を読んで、自分もグウィンデルへの憧れが高まっていたところだったので、なおさらその標本はまぶしく見えた。しかも、10月に取材で訪れたミュンヘン・ショーでの個人的なお気に入りも、やはりスイス産のグウィンデルだったので、「奇遇ですね」とばかりにその標本のスナップを出し、グウィンデルの写真を見せ合ってニヤニヤするというあやしい集いとなった。
亀田さんが恋い焦がれていたインドのグウィンデルは、その後、SOLDになっていたそう。でも、なんだかんだ、まわりまわって亀田さんはきっと手に入れて、そのうちひょいと見せてくれる気がする。亀田さんとは、そういう漢だ。
そして、今年のツーソンは、メインショーのテーマがクォーツにちなんだものだったそうで、そこに展示されていた標本のスナップも続々と見せてくれた。
この素晴らしいアホイトインクォーツもそのひとつ。そんな亀田さんが見つけたツーソン・ショーでの注目の標本紹介は後編へ。