例えばヴァイツェンなら泡持ちがいいベル型グラスといった、スタイルごとにセオリーはあるけれど、ビール好きにとっての「マイベストグラス」とは何なのか。
一家言ある6名の回答で多数を占めたのが、ステム(脚)のあるチューリップ型。その中でもサイズや形状、ステムの長さなどに各人のこだわりが見える。味も香りも豊かな個性を持つクラフトビールに万能性を発揮し、注いだ際の優美さもまた、“正解”の一要素だ。
短いステムが扱いやすい、不朽のハンドメイドグラス
選んだ人:橋本一彦(sansaオーナー)
〈木村硝子店〉でビアグラス「サンサ」の開発にも携わる橋本さんが選んだのが、同社の名作「サヴァ」。日本の食文化に馴染む短めの脚が特徴で、「飲む時も洗う時も緊張せず扱えます。見た目・機能とも主張が多すぎず、ワインから缶ビールまで幅広い液種に対応できます」。
ビールの種類はもちろんシーンを選ばぬ万能感!
選んだ人:山田千恵(Pigalle Tokyo店主)
ボトルショップ〈Pigalle Tokyo〉の店主が愛用するのは〈石塚硝子〉の「アデリア Gライン ブランデー240」。小ぶりな作りで「ラガー、スタウト、IPAにも。香りが立ちステムも細く、カジュアルでも、きちんとしたシーンでも使いやすい」。
喉越し、香り、個性を受け止める高い汎用性
選んだ人:谷和(CRAFT BEER BASE MOTHER TREE代表)
大阪を代表するクラフトビール専門店を営む谷さんが「万能で理想的」と語る〈東洋佐々木ガラス〉の「ビアグラス36310」。「グビグビ喉越しを楽しむ時も、華やかな味わいを堪能する時も使える。半量注いでアロマポケットを作るとリッチな香味が楽しめますよ」。
きめ細かな泡立ちと飲み口。家飲みの質が格段にアップ!
選んだ人:図師聡(KOFFEE MAMEYA -Kakeru-バリスタ)
2020年夏、コロナ禍で家飲みが増えた際、バリスタの図師さんが出会ったのが〈BIRDY.〉のスパークリングタンブラー。研磨職人が内側に施したかすかな凹凸が繊細な泡を作り出す。「ステンレスなのでキンキンに冷やしておけて、クリーミーな泡となめらかな口当たりが素晴らしい」。
アメリカの著名ブルワーが考案したIPAのための名作
選んだ人:スコット・マーフィー(ミュージシャン)
「アメリカのブルワリー〈ドッグフィッシュヘッド〉で出会ったのがきっかけ」とスコットさんが語るのが、同ブルワリーの醸造家が開発に参加したドイツの名門〈シュピゲラウ〉のIPAグラス。独特の形状がホップの香りと苦味を引き立てる。「アロマを見事に感じます」。
エール系から全スタイルに。香りが花開く美しいデザイン
選んだ人:田嶋伸浩(「TRANSPORTER」発行人)
田嶋さんが優れたデザイン性に信頼を寄せる、イタリアの醸造家とビール専門家が設計した〈RASTAL〉社の「TEKU」。「口部の外側へのカーブが香りを閉じ込め、傾ければ香りや味わいを最大限に堪能できる。トリノで開発者本人からもらって以来、洗練されたビールはこのグラスです」。