Bar Landscape.(銀座)
大会で頂点に立った2人が並ぶ、シックなカウンター
全国バーテンダー技能競技大会で、松尾一磨さんが2013年、民子さんが16年に総合優勝。共に銀座の名店で修業経験のある実力派の夫婦が、19年に店を構えた。それぞれのレシピを持ち、マティーニなら一磨さんが〈リトルスミス〉、民子さんが〈BARオーパ〉と、出身店の作り方を踏襲。
「独自に組み立てるレシピもあるけれど、意図せず似通ってきました。オールドファッションドはほぼ同じ」と笑い合う。コンセプトは、世界中のさまざまな生産地を巡り、歴史や文化といった“景観”を伝えること。今後も交流のため国内外へ赴く予定。「天使音(あまね)メロン」などのフルーツを使ったカクテル、岩手県の農場から仕入れたソーセージや生ハムも逸品。
BAR VICTOR'S(人形町)
「あの小説が店名の由来」と聞けば、必ず飲みたいギムレット
キーライムを用いた爽やかな香り。通常のライムを搾るより苦味が少なく、ライトな口当たりだ。小説『ロング・グッドバイ』の主人公がギムレットを飲み交わすシーンで、初めてカクテルに出会った、岡崎太佑さん。大学を休学して上海、インド、パキスタン、トルコなどを回り、帰国後バーテンダーになろうと決意し、銀座〈リトルスミス〉に10年間勤めた。
「若手の修業の場としても最高の場所でした。営業後、同僚とよくカクテル作りの練習をしましたね」。2020年、独立。7mもあるホンジュラスマホガニーのカウンターは、その頃からの仲間が集まり搬入。シンプルに削ぎ落とした店内に一枚板が光る。
BAR AGROS(銀座)
〈オーパ〉の系譜を継ぐ“畑”を、耕し育む
トニックウォーターを加えた後、炭酸が抜けないよう、ほぼかき混ぜないのが一般的なジントニックだ。ところが田畑道崇さんの手法は違う。炭酸の周りにジンとライムが絡みつくまでステアする。出身店である〈BARオーパ〉の名バーテンダー、大槻健二さんの味わいを自分なりに表現。師が病に倒れた後も、同店の25周年を迎えるまで守り続けた、田畑さんの気概が感じられる。
「大槻さんは基本に忠実で、長年スタンダードを追求されていました。特にジントニックとマティーニのレシピは自分にとって財産です」。店名はラテン語で“田畑”の意味。銀座で生まれた“畑”が育ってくれたらという思いも込められている。
HARD SHAKE BAR130(吉祥寺)
“ハードシェイク”の継承と、クラフトリキュールへの情熱
吉祥寺はハモニカ横丁の朝日通り、行列のできるたい焼き屋が目印。隣に延びる階段を上がると“130”の看板が。白×ネイビーの配色が映える空間には、ジャズやシャンソンの音楽が流れる。カウンターに立つのは、渋谷と銀座の名店で修業を積んだ、本間勲さんだ。
液体をしっかり混ぜて冷やす複雑な技法・ハードシェイクを生み出した、銀座〈テンダー〉の上田和男さんから指南を受けた。サイドカーやギムレットはもちろん、アブサンやアマーロといったリキュールメインのカクテルも。バックバーに並ぶ200種類近くのクラフトリキュールは、イタリアのビターアペリティフ「グランクラシコ」に出会ってから集め始めたという。
Dimples(神田)
透明感あふれる造りと接客に、癒やされる
2023年1月、15時から始まるバーが神田駅から程近くにオープン。大きな窓から差し込む自然光や白を基調とした内装はカフェのよう。店主の池上雅子さんの柔らかい物腰も印象的だ。〈資生堂パーラー〉〈Bar Shake〉と銀座で約20年勤め、2011年には『サントリー ザ・カクテルアワード』で最優秀賞を受賞。師は両店でお世話になったという古田土雅行さんだ。
「ジントニックのご注文が多いですが、前の職場で人気だったカンパリソーダもよく作ります。シェイク系ならギムレット。店名にしたスコッチウイスキーも出ますね」。古田土さんの教えでもあるモットーは“お酒はおいしく、楽しく”。池上さんが艶然と立つカウンターで、日が高いうちから飲みたい。