長田杏奈
メイクのやり方だったり、ファッションのことだったり、日常のことだったり。聖秋流ちゃんの動画って、おしゃべりがとっても楽しい。元気が出るし。
聖秋流
ありがとうございます!
長田
堂々としてるのがいいなって。撮るときは緊張しない?
聖秋流
しますします。「3、2、1」のときとかは。
長田
「3、2、1」?
聖秋流
本番に入る前、3秒のカウントダウンをするんです。秒読みが始まったら緊張します。
長田
そんなふうに見えない!
聖秋流
緊張してないように見せるのがうまいんです(笑)。
長田
しかも、芸人さんみたいにすっごく上手におしゃべりするでしょ。「すべらない話」じゃないけれど、こんなことがあったとか、こんな人がいたとか、面白い話をテンポ良く顔芸まで挟んで。
聖秋流
あははっ!なんかちょっとバカにしてますぅ?
長田
してないしてない!感心、超感心!芸達者だなあ〜って。
聖秋流
でも、いつも、ある程度しゃべる内容は決めてます。
長田
そういうインスピレーションってどういうときに浮かぶの? 「これ言ったろう」みたいなのは。
聖秋流
えーっ!どうかなあ、特には……。あははっ!
長田
そうかあ。これがデジタルネイティブ世代の……。
聖秋流
あははっ! ただ、毎回、TikTokはタメ撮りするんですけど、そのときに、ある程度、いままで起こったことを遡ります、記憶の中で。「ああ、この前、こういう人がいたなあ」って。
長田
走馬灯状態?
聖秋流
そう。それをどうやって話したら面白く着地できるかって。
長田
オチを考えるんだ。
聖秋流
全部実話なんですけど、どうやって面白く伝えるかということだけを考えて撮ってます。
長田
あと、ちょっとアンチっぽい人への返しとかも素晴らしいなって。ポジティブなことを言って蓋をするのではなく、言い返しながら笑い話にするところが、すっごくカッコいいなって。
聖秋流
でもあれも、すごく考えて言ってるんです。こういうときにこういうことを言うとこういうふうに思われそうだな、それやったらこう言おう、とか。あらかじめ来るだろうコメントを予想して。
長田
へえ〜!自分の中でちゃんとシミュレーションするんだ。
聖秋流
めっちゃします。
長田
コメントも読むんだ。
聖秋流
読みます。良いことも悪いことも全部読みます。
長田
何が面白いかって、人によって違うけど、聖秋流ちゃんの面白さの基準ってどこにあるの?
聖秋流
関西弁ですね。
長田
なるほど〜。確か、滋賀県出身ですよね?
聖秋流
はい、滋賀です。たま〜に標準語をしゃべったりすると指摘されるんです。「いつもと違う」って。やから、なるべく関西弁が抜けないように気をつけて。私、すぐ染まるんです、人のしゃべってる言葉に。
長田
わかる。私も学生時代に北海道出身の友達の「〜さあ」が伝染(うつ)っちゃったもん(笑)。
聖秋流
北海道弁はかわいいです。あの独特な感じ、伝染りますよね。使いたくなる自分もいますから。
長田
そもそもTikTokをやろうと思ったのはどんなキッカケ?
聖秋流
私と同じような友達がいるんです。男の子だけどメイクしてる友達。先にその子がTikTokを始めたんです。面白そうって言ったら、「やってみれば?」って。その一言に背中を押されて。最初はファッションやメイクが中心だったんですけど、しゃべり系の動画の再生数が多いと気づいて。ただ、過去のものを観返すと、めちゃめちゃしゃべるのがトロいです。
長田
へえ〜!じゃあ、鍛えられたんだ、そのテンポは。
聖秋流
あと、標準語でした、最初は。いま観るとめっちゃ気持ち悪い(笑)。どんなしゃべり方しとんねんって思いましたもん。
長田
いつから始めたんですか?
聖秋流
毎日投稿は、去年の元日から。その前からちょこちょこやってはいたんですけど、しゃべり系は一切あげてなくて。
長田
なぜ元日から?
聖秋流
単純に、その頃やることがなかったんです。アパレルの仕事しかやってなくて。お洋服の店員さんをやってるんですけど、もともと芸能のお仕事に興味があるのに、そのための努力を何もできてない自分がいて。やるなら本気でやらなきゃと思って始めたんが毎日投稿やったんです。
長田
芸能界に憧れがあったんだ。
聖秋流
ありました。中学校卒業したあたりからずっと。
長田
なぜ?
聖秋流
その頃、メイクする男の子が一気に増えて、テレビにもよく出てくるようになったんです。こんどうようぢさん、りゅうちぇるさん、ゆうたろうさん。この3人が私の中で、すっごい勇気を与えてくれて。私は最初、メイクができなかったから。
長田
興味はあったの?
聖秋流
なんていうんか、自分を好きになるためにメイクを始めたんです。もともと自分の顔に自信がなくて、中学時代はマスクで顔を隠すような感じで。高校生になったら、メイクするぞって(笑)。
長田
どこから始めたの?
聖秋流
最初はメイクをした男の子に憧れてたんです。「私は男の子」っていうのが自分の中にあったし、バカにされたくないという思いもあって。やから、最初は、マスカラとかアイラインとかには手をつけなかった。眉とかリップから始めて。で、最終はコレ。エスカレートエスカレートで(笑)。
長田
そっか。聖秋流ちゃん、動画でもしょっちゅう「男の子」ってことを口にしてるもんね。
聖秋流
新規で観てくださる方にも向けてますし、たまに言われるんです。「自分が女の子だって勘違いするな!」って。そういうコメントが来ないように。
長田
予防線を張ってるんだ。
聖秋流
そう。やから、プロフィールにもそう書いてる。
長田
バカにされたくないって、例えばどういう面で?
聖秋流
気を使われるのがイヤだというのが大きいのかも。私、幼稚園の頃からずっと男の子の友達がいなくて。小学校も高学年ぐらいになると、体育って、別になるじゃないですか。男の子と女の子の着替えとかが。そうなったときに気まずいんです。私もだけど、男の子たちも、普段、私が女の子たちと一緒にいるから、同じ更衣室で私がいるだけで着替えにくいんやろうなって。それでだんだん体育に参加しなくなって。私が考えすぎていたのかもしれないけれど、先生たちももっとわかってくれてればなって。「なんで見学するの?」って毎回聞かれるんです。それにはいろいろ理由があるってことを、説明してもわかってもらえないだろうなというのもあって。
長田
悩んだんですね。
聖秋流
そう、そのときは結構。学校へ行かなくなっちゃった時期もありましたし。それがメイクを始めるキッカケになったんです。ちょっとでも自分に自信が持てるようになればいいなって。
長田
メイクでいちばんこだわるのはどこですか?
聖秋流
やっぱ、ベースですかね。だからスキンケアが大事だなっていまは思ってます。
長田
前は違ったの?
聖秋流
とりあえず濃ければいいという考え方でした。やから、TikTok始めたとき、最初に気づかされたのは眉毛。観てくださる人たちからのコメントでわかったんです。私の眉、ヘンやって。
長田
どんなツッコミが?
聖秋流
「濃い」「太い」(笑)。確かに、いま観るとビックリするぐらい太い。まるでかりんとう。「かりんとう2本か!」(笑)。
長田
TikTokっていうと、若い人がやるものというイメージがあるんだけど、聖秋流ちゃんのお母さんも始めてみたい!って言ったらどんなアドバイスをしますか?
聖秋流
えーっ!私と同じことをするのなら全力で止めるかも(笑)。
長田
というのも、私がTikTokをやるとしたら、何をやったらいいのかなって。ネタになるような話あったかなって。大人って、記憶力が弱ってるから、思い出せないんだよね(笑)。
聖秋流
でも、大人だからこその視点ってあると思う。大人しかできない体験談とか。
長田
走馬灯を遡るように。
聖秋流
そう。経験談としては若い子より豊富だから、若い子がしゃべることのできない内容をしゃべったりするといいのかもしれない。例えば……。スーパーに行ったときの視線とか。若い子の視線とは全然違うじゃないですか。経験を重ねないと養えない視線。肉の良し悪しとか。
長田
最初の投稿からスーパーの体験談?
聖秋流
でもね、食べ物や料理系の人、多いですよ。手だけ出てくる動画とかあって。
長田
あ、なるほど。顔出しをせずに手と声だけとか?
聖秋流
いいと思う。長田さん、声のトーンがすごくいいし。話にのめり込みやすいなって思う。
長田
私、文章を書くと怖い人だと思われるんだけど、しゃべるといい人だって思われる(笑)。
聖秋流
そうですか?文章を読んでみても、すっごく性格のいい人なんだなって思ったけれど。裏表のない人だなって。
長田
ありがとう。もし、聖秋流ちゃんがイチから全然違うアカウントを作るとしたら、どんなアカウントをやってみたいとかありますか?
聖秋流
やっぱりかわいい系がいいかなあ。だってそもそも、かわいい系でやってたつもりが、最近みんなに否定されるんです。やっぱ、しゃべり系のイメージが強いじゃないですか。しかも関西弁だし。だから、しゃべんない系のかわいい系がいいです。あざとい系の(笑)。
長田
TikTokはいつ撮ってるんですか?
聖秋流
お仕事に行く日とか、休みの日にメイクしたから撮るとか。
長田
メイクが出来上がってるときにやる感じ?
聖秋流
そうです。最近は、スッピン投稿もするようになったんですが、それ以外は万全な状態でやるようにしていて。
長田
スッピン動画は結構話題になったみたいだけど、思い切って出そうと思ったのはどうして?
聖秋流
こういう活動を続けていくうえでスッピンのタイミングって絶対来るだろうし、だったら自分で出しちゃおうって。こうしたらバズるのかなと思って出したらバズった。
長田
すごい、聖秋流ちゃんの中にプロデューサーが棲んでる(笑)。そういうのってカンですか?
聖秋流
カンです。こうすれば絶対にバズるっていう確信は自分にもないんです。しかも案外、バズらなそうだなと思ったものがバズったりするし。
長田
それで学んでいくんだ。
聖秋流
そう。こういう感じが好きなんだ、みんな、って。
長田
メイクのこともそうだけど、TikTokやってて良かったと思うことってどんなこと?どんなコメントが来るとうれしい?
聖秋流
やっぱ、王道だけど「かわいい」です。ありきたりな言葉やけど。だって、男の子に生まれたのに、こんなに「かわいい」って言われるなんて思ってなかったし。だからこそ、うれしいんです。
長田
わりといちばんに出てくる言葉じゃないですか、「かわいい」って。
聖秋流
そう。咄嗟に出てくる「かわいい」はすっごくうれしい。もっと大人になれば、「美しい」と言われる方がいんやろなって思うけど、いまは「かわいい」。
長田
「勇気づけられる!」っていうメッセージもありますか?
聖秋流
あります。やっぱり、同じ境遇の人って結構いるんです。「僕も男の子で悩んでるんです」とか、「女の子だけど女の子が好きで、みんなに公表できなくて」とか。やからこそ、「聖秋流ちゃんが笑ってる動画を観て勇気づけられます」とか、そういうのはすっごくうれしい。私みたいな子はどこにでもいるし、いっぱいいるってことを発信したいという思いがあったので。この間、若いお母さんからメッセージが来たんです。彼女には小さな息子さんがいらっしゃって、あるとき息子さんが「なんで僕はスカート穿いちゃいけないの?」と聞いてきたらしく、「聖秋流ちゃんのTikTokを観て、私は息子の気持ちに気づいてあげられてないと気づき、次の日ワンピースを買いに行って着せてあげたらすっごく喜びました。この子が大人になったときに聖秋流ちゃんみたいにキラキラした人生を送ってもらいたいです」って。そのメッセージを読んだときは鳥肌が立ちました。だからこそ、動画投稿をもっと頑張ろうと思いますし……。あれ、大丈夫ですか?
長田
うう……ごめん、泣いちゃった。みんな聖秋流ちゃんの姿に励まされているんだなって思うと、たまらない気持ちになっちゃって。
聖秋流
でもね、私がいちばんたまらないんです。こんな私でも誰かの力になってると思うと、めっちゃうれしいんです、ホントに。
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