龍崎翔子
私、大ファンなんです。TikTokでなんとなく流れてきて、気づいたらよく観るようになって。いつからされてはるんですか?
ケビン
2019年11月からです。
龍崎
古参アピするわけじゃないんだけど、たぶん、その頃から観てます(笑)。
そもそも、英語系のコンテンツがわりと好きで。8歳の頃、アメリカのピッツバーグに住んでいたことがあるので、そのときの記憶が残っているんです。ああ、そう、こういう感じだったなって、アメリカ生活の懐かしさもありつつ。
めっちゃカラフルなシリアルが出てきてましたよね。
ケビン
ケロッグの「フルートループ」ですね(笑)。
龍崎
ああ、これめっちゃ食べた!って。そういう懐かしさみたいなものもありつつ、勉強にもなるし、ただただ面白いネタ動画でもある。
例えば、アメリカのドラマあるあるシリーズ。ドラマではこんなドラマティックなセリフ回しだけど、現実はアッサリ、なのが面白くて。
どんな分担でコンテンツを作ってるんですか?
ケビン
TikTokは僕とかけちゃんでやってますが、YouTubeはもう一人、フランス語が達者なやまちゃんが加わって3人でやっていて。
僕が「こういうのがある」とアイデアを出すと、やまちゃんが「こういうのもある」と追加してきて、それをかけちゃんが「じゃあ、こうすればいいんじゃない?」とまとめてくれる、そんな感じなんです。
龍崎
実は、YouTubeも観てるんですが、TikTokは瞬間的な面白さがあって、とにかくエッジーだな、と。取り上げるトピックスも、英語をフックに文化の違いにフォーカスしてるのが面白い。さまざまな英語コンテンツがある中でそこがユニークだなって。
かけ
僕は2人とは違って日本にしか住んだことがないので、日本人とアメリカ人の考え方、生活習慣のギャップが面白いと感じるんです。思うほどギャップがない場合もあるんですが、違う場合はどこがどう違うのか、というのをどんどん掘っていくんです。
龍崎
例えば?
かけ
例えば、学校での告白を題材にするとすれば、それである程度面白いスケッチが作れるだろうと僕は考え、提案するんですが、「いや、そもそも学校では告白はしないな」とケビンが言う。
「そういうのは週末のホームパーティとかじゃない?」って。
「そうなんだ。じゃあ、ホームパーティってどういうのをやるの?」と話を膨らませていって。
ケビン
どういうストーリーラインでも「告白」というテーマでオチは思いつきますから、かけちゃんなら(笑)。
龍崎
着地させる腕がスゴいんだ。そういうネタ作りの面白さが、他の英語系コンテンツとは違うところですよね。
かけ
そもそも英語を教えようとは思ってないんです。英語を使ってふざける、ということが大きくて。英語のエンターテインメントですね。
ケビン
あと、僕がしゃべる英語の訛りがない、というのも大きな違いだと思うんです。日本人訛りが全然入ってなくて、標準的な英語を僕はしゃべる。そこはほかではマネできないところかなと。
龍崎
アメリカのどこの街で育ったんですか?
ケビン
ジョージア州ローム市です。高校生になるまでそこで育ちました。南の方ではあるので、サザンアクセントでしゃべる人も多いのですが、僕が行ってた学校や友達はそうではなく、訛りなしの英語をしゃべるようになって。
龍崎
印象に残ってるのが、高校の荷物検査ネタ。日本だとマンガやあめちゃんで怒られるけど、アメリカでは銃やドラッグを持ってないかをチェックされる。そういったネタを通じて社会問題をポップに見せているのがいいなって。
ケビン
これは実体験なんです。学校が終わって外に出たら、警察官と警察犬が駐車場を回ってチェックしてる、みたいなことはわりと日常的な光景だったり(笑)。
龍崎
TikTokクリエイターになられたのはどのようなご経緯で?
ケビン
僕とかけちゃん、そしてやまちゃんと、大学の同級生で仲良くなって。そのうち3人でなんかやりたいね、って話をよくしていたんです。で、一時期、ニコニコ動画で投稿をしてたこともあるんですが、なかなかうまくいかなくて。そのうち就活になり、それぞれ就職して別々の道に進むことになったんです。
龍崎
どんなところに就職したんですか?
ケビン
僕は化学品メーカーの物流部で。
かけ
僕は国内メーカーのマーケティングをしてました。
龍崎
すごくまっとうな(笑)。
ケビン
わりとまじめです(笑)。でも、しっくりこなかった。それで、3年目で会社員を辞めました。
龍崎
3人同時に?
かけ
最初にケビンが辞めて。そこにやまちゃんと僕が続いて。
ケビン
いまでも覚えてますが、「先に辞めるわ」って話を2人にしたんです。カフェを始めつつ、自分の将来を考えたいと。すると、やまちゃんもかけちゃんも、「じゃあ、俺たちも辞めるわ」と。
龍崎
その時点でまだTikTokは始めてないわけですよね。結構ギャンブルじゃないですか?
ケビン
ギャンブルです(笑)。何をしようとも決めず、とりあえずカフェで一緒に働こうよと。
龍崎
どういうカフェですか?
ケビン
デザート屋さんです。
龍崎
へえ〜。それはいまは?
ケビン
店は後輩に譲りました。とにかく、新しいことをやるのが好きなんです。ゼロから何かを作り上げるのがやっぱり好き。そういうマインドなんだと思います。
龍崎
私も起業したんですが、私の場合は会社員経験もなく。親からも、翔子は将来経営者になれるかもよと言われていたので、ちっちゃい頃から、将来、自分は会社を作るんだろうと思いながら過ごしていたんです。
ケビン
会社員を経験しといたほうが良かったかな、と思いませんか?
龍崎
めっちゃ思います!
組織がある程度大きくなったときに、自分が部下として働いた経験がないから、上司はこういうときにこうする、というのがわからない。だから、学生時代アルバイトの記憶をめっちゃ引っ張り出したりするんです(笑)。
でも、会社を辞めてインフルエンサーになるって、すごく大きな挑戦だし、ある意味、賭けというか。
ケビン
失うものはみんなないので、やれることをなんでもやろうよ、と。学生時代にうまくいかなかったニコニコ動画にリベンジしたいという気分もあったんです。
龍崎
1回目は「4レターワードの使い方」っていう(笑)。で「オーマイゴッドの使い方」。最初からクオリティが高いですよね。めちゃめちゃハネましたし。
かけ
こういうときはこんな英語を使う、というのをコントっぽくやる、というのは最初から決めていたことで。そこはもう、最初からブレてないです。英語を教えるんじゃなくて、英語をネタにしたエンタメをやる、というのは。
ケビン
1回目からうまくいってるように見えるんですが、試行錯誤はいろいろとあったんです。最初はカフェでコンテンツ作りをやってましたから。これとこれでオリジナルスイーツを作ってみよう!とかそういったことを。
龍崎
じゃあ、カフェはカフェで別に?
ケビン
そうです。で、それとは全然違う「イングリッシュルーム」をやってみたところ、カフェを抜いたという(笑)。
TikTokって受動的なプラットフォームだと思うんです。アプリからおすすめが来て、それを観る。そこがほかのSNSとは全然違う点。
それゆえの、工夫ポイントというか、観たいと思ってなかったコンテンツが流れてくるわけですから、最初の数秒間で離脱されないように、というのは始めた頃からすごく気にかけたことですね。
龍崎
ちなみに、影響を受けたアカウントとかってありますか?
ケビン
影響というか、ただただ面白いだけなんですが、この人の動画は好きですね。
Linda Dongさん。カルチャージョークがめちゃめちゃ面白いんですが、細かすぎてアメリカ人じゃないと伝わりにくい部分もあるんですが。いわゆる、料理系TikTokの「あるある」。TikTokでレシピを紹介する人のものまねをしてるんです。
龍崎
面白〜い!
ケビン
いわゆる、料理系TikTokの「あるある」。TikTokでレシピを紹介しをする人のものまねをしてるんですが、180万の「いいね」がついてるんです。
龍崎
SNSって自分が見たいものしか見ないので、新鮮な情報がなくなってくる感覚がすごくあるんです。
でもTikTokは違う。自分が選んだものではない、新しいことを見せてくれるプラットフォーム。それはTikTokをやる側にとっても、みんな等しくチャンスがあるという感じですよね。
ケビン
SNSでのプレゼンス(存在感)を伸ばすことによるメリットを強く信じていて。だから頑張れたというのもありますね。
龍崎
どういうメリットですか?
ケビン
人気者になりたいんじゃなくて、僕はビジネスをやりたい。そういうメリットですね。
龍崎
ということは、この先事業することを考えていらっしゃる?
ケビン
みんなそれぞれ夢はあるんですが、僕は、テイクアウトのみの飲食店を将来的にやりたいなって。
龍崎
やっぱり飲食なんですね。
かけ
大学生の頃もキッチンカーを借りて2人でやってたんです。
龍崎
どんなお店ですか?
ケビン
台湾かき氷の店です。新大久保でやったりもしたんですが。
かけ
それも結局、赤字を出して失敗に終わっていて(笑)。でも、それが将来一緒に何かやろうよ、のきっかけになったと思います。
龍崎
かき氷しかり、ニコニコ動画しかり、トライアンドエラーを重ねていまがある。そして、事業をやるということと、発信をするということが、お2人の歴史の中でサンドイッチ状になっている。
ケビン
そうしようと思ったわけじゃないのに気がつけば(笑)。
龍崎
相乗効果はありますもんね。
かけ
そうなんです。TikTokがベースになり、さまざまな展開につながれば面白いし、TikTokでの発信も続けていきたいなって。
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バックナンバー
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