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はじまりは、TikTok 01 伊吹とよへ(インタビュアー・岡宗秀吾)

有名人やお金をかけた投稿が必ずしもバズるとは限らない。TikTokは、あらゆる人に等しく開かれたプラットフォーム。自撮りやダンスだけではなく、ニュースや動画作成のノウハウ、ここから新しいヒット曲も生まれるなど、その多様な魅力を毎回1組の人気TikTokクリエイターにインタビューする連載がスタート。初回のゲストは、23歳、同級生コンビの「伊吹とよへ」さん。聞き手はテレビディレクターの岡宗秀吾さんです。

movie: OFBYFOR TOKYO / photo: Koichi Tanoue / edit: Karin Ohira / text: Izumi Karashima / design: Shinji Mizoguchi(lush)

TikTok 伊吹とよへ 岡宗秀吾
高校・大学と同級生の伊吹とよへ。1997年生まれの東京育ち。チームには2人のほかにカメラマンが1人いる。

岡宗秀吾

「伊吹とよへ」というのはクリエイター名、ですよね?

伊吹

僕が「伊吹」で。

よへ

僕が「よへ」。

岡宗

ああ、「伊吹」と「よへ」なんだ。え、「よへ」でいいの?

よへ

本名がヨウヘイで「よへ」。

岡宗

今おいくつなんですか?

伊吹

2人とも23です。

岡宗

同級生ですか?

伊吹

はい。高校・大学と一緒で。

岡宗

仲良しだったんだ。

伊吹

ツレです。いつもつるんでました。

よへ

ただ、僕は大学を休んで留学したので1年遅れて卒業したんです、この春に。

岡宗

どこ行ってたんですか?

よへ

カナダに行ってました。語学を身につければ就職に有利かなという漠然とした理由です。

伊吹

なので、一般的に言えば社会人2年目と同級という感じです。

岡宗

じゃあ、お仕事は?

伊吹

就活はしましたし、内定をもらったりもしたんですが、就職はしませんでした。TikTokが本業です。

よへ

僕も伊吹に誘われてそのまんまです。

岡宗

すごいなあ!へえ〜!そもそも、これを始めようとなったキッカケは何なんですか?

伊吹

もともとは、僕が1人でやってたんです。ただ単に「有名になりたい」という一心で。

岡宗

お笑い芸人を目指したりとかはしたんですか?

伊吹

やりたいとは思ってたんです、実は。でも、めちゃめちゃ才能のある人ばっかで歯が立たないなって。ちょっと違う角度から面白いことをやってみようと。

岡宗

何年前からですか?

伊吹

2年ぐらい前。大学生の頃です。TikTokって凝った動画を上げる人が多いので、ユルくてクスッと笑える、くだらないことをやったら目立つかなって。そこで、高校のときによくやっていた「世界一早い早口言葉」というのをやったんです。ホントにしょうもない高校時代の遊びなんですが、出してみたらバーンとバズって。

最初にバズった動画、通称「ブルボン」。「世界一早口で、ただ単にどや顔で言葉を言う」というもの。
現在の人気シリーズ、「イブ検証」。いわゆるドッキリなのだが、2人の空気感と音楽が妙にクセになる。

岡宗

フォロワー数はそれでどのくらいに増えたんですか?

伊吹

20万〜30万だったかなあ。

岡宗

すごい!じゃあ、それをもっと盛り上げるために2人で?

伊吹

相方が欲しいと思ったんです。1人でやってるとネタしかできないんで、ツッコんだりボケたりみたいなおしゃべりがしたいなって。そのときヨウヘイはカナダにいたんですが、「1年後に帰ってきたら一緒にやらない?」って電話して。すると「わかった。じゃあ、明日帰るわ」って。

岡宗

即決(笑)。

よへ

1年の予定だったんですが、行って半年目に伊吹から電話が来て。カナダの田舎で農場体験をしてたんです。働く代わりに食事と宿舎を提供してくれるっていうことだったんですが、草刈りを一日中やって夜はコンクリート打ち放しの地下室で寝るという日々で。

岡宗

結構しんどいな。

伊吹

ビデオ通話で話をしたら、ヨウヘイの顔が死んでた(笑)。しかも、電話越しにホストファミリーの怒鳴り声が聞こえてきて。

よへ

ホームステイ先が荒廃してて。18歳ぐらいの息子が反抗期で毎日ケンカしてるんですよ、「うっせー!」って。

岡宗

親子ゲンカだ(笑)。

よへ

しかもその息子、「オレ、ショットガン持ってるぜ」って自慢してくるんですよ。だからもう、夜も安心して眠れなくて。伊吹から電話があったときは渡りに船。すぐに帰国しました(笑)。

TikTok 伊吹とよへ 岡宗秀吾
ディレクターとして数多くの番組制作に携わってきた岡宗秀吾さん。テレビマン歴は25年。

岡宗

それで2人で始めたんだ。

伊吹

はい。「伊吹とよへ」で。それで、いろいろやるうちに、ヨウヘイが僕にドッキリをしかける「イブ検証」というネタが主流になってきた、そんな感じです。

岡宗

今はどのくらいフォロワー数がいるんですか?

伊吹

200万人ですかね。

岡宗

へえ〜!どういうフォロワーさんが多いんですか?

伊吹

中高大学生がメインですね。男女は半々ぐらい。

岡宗

僕ね、お2人の動画を100本ぐらい観てみたんです。

伊吹とよへ

マジっすか!

岡宗

多くの人を惹きつける魅力がどこにあるのかを探ってみようと。結果、これは「青春譚」だと思いました。お互いにどうでもいいイタズラをし合って、2人が本当に仲が良くて、心底楽しんでる様子に癒やされるというか。僕はもう40代後半のおじさんなんですが、こういうノリが相変わらず好きなんです。高校生の頃、全寮制の学校にいましてね。大盛りの焼きそばを何秒で食えるかとかそういうのをよくやってたんです。男だけだし、寮だから制限もされる。外に遊びに行けるわけでもない。そうすると、風呂場で足の裏に石鹸をくっつけてスケートやってどこまで行けるかとか、そういう謎のノリになるんですよ。何を生み出すわけでもない、ただのバカ。2人の動画を観ていると、かつてそうだった自分を懐かしく思い出したんです。TikTokというプラットフォームだからこそ、短い時間だからこそ、そのエッセンスを凝縮して見せられる、それが面白いし共感を呼ぶんじゃないかと。

伊吹

しっかり分析されてる!

よへ

まさにその通りかも。

岡宗

僕もテレビの仕事を通してわかるんですけど、こういうノリが好きな人って確かに多いんですよ、男も女も。例えば、サンドウィッチマンさんの人気が高い理由もそこにあって。仲がいい2人がふざけ合うのを見てるとこっちも微笑ましくなってくる。それはやっぱり、作られた関係では醸し出せないんですね。高校のときからの仲だからこそ、カナダの田舎の農場で怖い思いをしてる友達を助け出したわけでしょ。

伊吹とよへ

あはははは(笑)。

岡宗

自分たちではどう分析されてます?200万人いるということは、視聴率に換算すると深夜番組でやれる視聴率なんですよ。

伊吹とよへ

え、ホントですか?

岡宗

そういう意味でも、時代の変化を感じるんです。表現をしたい人が表に出ていきやすい環境になったなあと。テレビマンとしてはとてもうれしいことです。

伊吹

ただ、僕らもテレビを観て育った世代なので、この日常のノリがここまで支持されることにうれしさもありつつ、驚きもあって。テレビの基準からすればまったくダメなレベルだと思うんです。

よへ

未完成品なんです、僕らって。テレビって完成品じゃないですか。フリからオチまでしっかり出来上がってる。僕らのくだらない日常ノリは全然出来上がっていないものだけど、でもそれがウケてしまう。僕らとしては全然手応えがないのに、めちゃくちゃ観られてる、そんな感じなんです。

タイトル「壮大」。これはもう見てもらうしかない。緊張の緩和。

伊吹

だから、「コレめちゃくちゃオモロかったわ、絶対バズるわ」と思って投稿すると、ぜんぜんバズらない。逆に、「オモロくないし出すのやめとく?」というのがビックリするほど伸びるという。

よへ

どういう理屈なんすか?

伊吹

わかんないですよ(笑)。

岡宗

難しいなあ、それは。例えば、芸人さんでいえば、狩野英孝さんや出川哲朗さんのように、ちょっとスキがあるところがオモロくてウケる、ということはあるけれど、でもそれは、計算では絶対にできないことだし、計算でやり始めたらバレてしまうし面白くなくなるんですよね。だからみんな訓練を積む方を選ぶ。訓練して精度を上げて『M -1グランプリ』とかそういった競技化された賞レースに勝って売れていく。でも、お2人の場合は、そういった技術ではなく偶発性。それが、いやらしい計算ではない、というところがひょっとしたらバズる理由なのかもしれないですね。

伊吹

そうなのかなあ。

よへ

そう思います(笑)。

岡宗

でも、それは非常に難しいことなんです、ホントに。今までいちばん再生回数が多かったのでどのくらいなんですか?

伊吹

1000万回とかですかね。

岡宗

いっせんまんかいっ!!!

よへ

それも結局、こんなのバズるわけないよねと思ったもので。

伊吹

ヨウヘイが買ってきたジュースのストローがポテトだった、それだけのボケ動画なんです。

岡宗

なるほど。私もちょっと頑張ってみようかな。

伊吹

でも、毛利さんのフィールドの現代アートをTikTokで表現するってむっちゃ難しいことじゃないですか?

こちらが再生回数1000万回を超えた動画。ストローだと思ったらポテトだったドッキリ。そのラフさ、ガチさこそが彼らの最大の魅力だ。

岡宗

ちょっと待って、1000万回いうたら、テレビで言えばゴールデン枠の視聴率があると言っても過言じゃない。

伊吹

うれしい! 僕、宮川大輔さんみたいになりたいというのが最初の動機なんです(笑)

岡宗

僕、この世界で25年やってますけど、それこそ、番組の精度を高めるための技術を習得してきたんです。でも、そうじゃないところでブレイクし、本人たちも未完成品と自覚するものがウケる。だけど、1000万回の数字はウソではない。それだけの人が反応してるわけだから。これは、テレビマンとして脅威なんですよね。

伊吹

2年間やってきてわかってきたことが一つあって。僕らの動画に対するツッコミコメントが多いとハネる、ということなんです。逆に言うと、ツッコミどころのない完成品は、観てる人も「面白いね」としか言いようがないのでハネない。ヨウヘイも言うように、ツッコミどころが満載の未完成品だからこそバズるのかなって。

岡宗

僕の25年間はなんやったんや(笑)。しかし、「イブ検証」という言葉は発明ですね。「どっきり」じゃなくて「検証する」というのがいい。観てると一緒に住んでるように見えるけれど……?

伊吹

ほぼ一緒に住んでます。

よへ

僕が伊吹の家に居候状態で。あれは伊吹の実家なんですよ。

岡宗

実家なんや!

よへ

友達んちで遊ぶノリです。

伊吹

親、うるせ〜ってノリです。

岡宗

それを200万人も観てるって、そりゃヤバいよ!

伊吹とよへ

あははは(笑)。

伊吹

そういう実家の日常からお金持ちになれたら面白いかなって。

TikTok 伊吹とよへ 岡宗秀吾
新しいトリオ「伊吹とよへと秀吾」ができるかも?岡宗さんの高校生の娘さんは「伊吹とよへ」の大ファン。

岡宗

TikTokって、女の子が曲に合わせて踊るイメージですけど、お2人みたいなノリでもいいとなると、僕のようなおじさん世代が始めてもいいものですか?

よへ

もちろんです。全然大丈夫。

伊吹

60代70代でやってらっしゃる方もいっぱいいますし。

岡宗

テレビの世界も大変なんでこっちの世界に行こうかとマジで思ってます、今(笑)。

伊吹とよへ

マジっすか!!!

伊吹

すごい方向転換!

よへ

となると、さっきと逆のことを言いますけど、岡宗さんが「完成度の高いもの」を載せたらどうなるのかを観てみたいなあ。

伊吹

いや、でも、どうかなあ。完成度の高いのものは皆求めてない気がする。

伊吹

確かに。ガラケーの画素が粗いみたいな映像の方がバズるんだよね。

岡宗

いいこと教えてくれた。なんも知らんかったら、おっさんの力見せたろかってなるとこだった。それはやらない方がいいってことだ。

伊吹

うーん、でもやっぱ、「逆に」はあるのかもしれないです。TikTokはなんでもアリのプラットフォームですから。

岡宗

なるほどね。僕は25年という経験を積んでしまったけれども、気持ちはお2人と同じなんです。何かを表現をしたい、有名になりたい、その中身は一緒。「伊吹とよへ」が僕の中にもいるんです。

伊吹

一応お伝えすると、尺はマックス1分です。僕らもそれで毎日作ってアップしてるんです。

岡宗

1分かあ〜。

よへ

その1分をテレビディレクターがどう作るのか興味津々です。

岡宗

観てみたいっす!

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