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「愛って、一方的に時間や労力を捧げたくなる気持ち」。アオイヤマダが選ぶ、愛の映画『パリ、テキサス』

愛の映画を語る時、その人が理想とする愛の形が見えてくる。ダンサー・アオイヤマダさんに聞いた、愛と映画の話。

text: Emi Fukushima

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愛って、一方的に時間や労力を捧げたくなる気持ち

もともと好きだった作品ながら、結婚を機により共感するようになったのが『パリ、テキサス』。妻子と別れ人生に絶望していたトラヴィスが、弟夫婦の助けを得ながら過去と向き合い前に進む物語です。劇中彼は、再会した息子とともに、消息を絶った元妻ジェーンを捜す旅へ出るのですが、心を動かされたのは終盤、元夫婦がマジックミラー越しに再会する場面。そこはジェーンが働く店の一角で、「のぞき部屋」のような造りのため彼女からは相手の姿が見えません。しかし受話器を介して語られる言葉から、次第に鏡越しの相手が元夫であることに気づく。

そして彼女が自室の明かりを消すことで、2人は数年ぶりに視線を合わせ涙を流します。この場面から感じたのは、こんなふうに夫婦は時に、どちらかが自らの“明かり”を消すことが大事だということ。自分の明かりを煌々とつけていると、自分しか見えず、相手に対して多くを求めすぎてしまうものです。でもいったん明かりを消して、相手の言葉に耳を傾けたり相手の気持ちに立ってみたりすると、本質が見えてくるんですよね。夫婦の愛を育て続けるために大事なことを教えてもらった作品です。

こうして改めて考えると、愛って、相手に何かを求めるのではなく、自分が一方的に時間や労力を捧げたくなる気持ちなのかもしれません。例えば日常の中では、お弁当を作ってあげたくなるような。そんな相手との間にあるものこそ、愛なのではないでしょうか。

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