先生:川井久恵(『アニメージュ』編集長)、土居伸彰(アニメ評論家)
失恋から立ち直れずにいます
『劇場版 あしたのジョー2』
ご存じ、スポ根の古典的名作。もちろん力石とジョーの関係にBL的な描写はないのですが、ジョーにとって宿敵で親友だった力石は恋人以上の関係とも言えます。
リベラというライバル=“別の恋人”に身を焦がすことによって、ようやく力石の死=“失恋”から立ち直れる。
恋愛もある種ボクシングのような“闘い”⁉新たな対戦相手を見つけよう!
『秒速5センチメートル』
中学生の頃に「大恋愛」をした貴樹(たかき)は、明里(あかり)を思い続けたまま大人になります。そんな姿に「自分のことのようだ」と共感して悲しみに浸るのも一手。
でも、一方の明里にも別の人生があるわけで、冷静に考えれば貴樹は明らかに引きずりすぎです。本人は気づいていないのか、いろいろチャンスも逃してます。貴樹みたいにならないように気をつけて!
好きな人に恋人がいます
『タッチ 背番号のないエース』
あだち充先生の名作を基にした本作は、独自のアレンジや原作にないエピソードを加えて話題を呼びました。和也は南が好きだけど、南は達也に思いを寄せているのは明らか。
南は2人を無自覚に振り回す魔性の女、といったところがありますが、それでも和也は南が好きで、愚直に甲子園を目指します。その生きざまは、好きな人に恋人がいると悩む人にも響くものがあるのでは。和也は志半ばにして、事故でこの世を去ります。気づいた時にはどうすることもできない状況って、あります。
例えば、コロナ禍で好きな人とコミュニケーションが取れなくなった人もいるはず。動ける時に動け、という解釈もできるのでは。
『リズと青い鳥』
みぞれは希美と恋愛関係ではありませんが、彼女の希美に対する純粋な感情は、「好きな人に恋人がいる」状態のように、手が届かない状態に近いのではないかと思うんです。
でも、そんな気持ちを抱ける相手がいるだけでも尊いこと。本作を観れば、届かない思いを客観視しつつ、その思いを人生の美しい思い出として持っていけると思います。
片思いが苦しいです……
『劇場版 銀河鉄道999』
鉄郎はメーテルとの旅路で、彼女に想いを寄せるようになります。心が通じ合ったものの、メーテルは「私はあなたの少年の日の心の中にいた青春の幻影」と言い残して去ってしまいます。
想いが成就しても別れてしまうなら、片思いのままでいいからそばに居続けたいって思いませんか?別れも愛の形なので、あのような形もまた美しいのですが……。
『サイダーのように言葉が湧き上がる』
恋がすべてのような青春時代をすごくうまく描いた作品。片思いは苦しいかもしれないけど、誰かに思いを寄せるのは素敵なこと。
チェリーは自分の思いを俳句にしていますが、彼みたいに何かで表現するのもいい。それが自分を客観視できることにもつながるから。
本作が、苦しみさえも楽しみ続けてみようよ、と教えてくれているような気がするのです。