Live

造園家・齊藤太一と家族の居住空間。一緒に成長し育てていく、大木のような家

新しい時代が始まったのだから、自分たちが住む居住空間のことを改めて見つめ直すのはどうだろうか。いまの家、本当に居心地はいい?自分のわがままに正直に、際立つアイデアの数々を繰り出し、理想の空間を手に入れた達人たちに居心地のよい場所のつくり方を聞きました。

photo: Norio Kidera / text: Sawako Akune / edit: Kazumi Yamamoto

造園家、齊藤家の1年

天井の高い、半地下のリビングダイニング。背高の窓の外では、さまざまの木々が思い思いに枝葉を伸ばす。森の大木をくりぬいた中から外を眺めているような、不思議な安心感が訪れる。「昔からずっとここに住んでいたみたい。転居してすぐから、新築とは思えないほどしっくり落ち着きました」と、家主の齊藤太一さんが話す。

造園家・齊藤太一の自宅外観
左官仕上げの外壁と下見板張りが目を引く前面道路からの眺め。

SOLSO FARM〉をはじめとする農場やショップを営み、造園家として活躍する齊藤さん。土地探しから完成まで7年近くを費やした家に家族と住み始めてから、もうすぐ最初の四季が巡る。この1年の間に3人目の子供が誕生。妻と自身の母、子供たちの6人家族でここに住む。

人里離れた森のようにも見える敷地は、都心の住宅街。等々力渓谷に向かう斜面の変形敷地を「几帳面に整備された四角い土地より、変化に富んでいて格段に面白い」と即断で購入し、建築家の田根剛さんに設計を依頼した。
「目指したのは土地に根ざす家と生活。田根さんと周辺の土地を歩き回ったり、エリアの歴史を調べたりして、この土地にふさわしい家を形作っていきました」

木造3階建ての八角形の家。エントランスは斜面の上側にあり、ドアを開けると1階の中腹に出る。そこから階段を下りると半地下のリビングダイニング。上ると主寝室とバスルームのある2階、子供たちと母の部屋がある3階と続く。

できる限り自然素材を用いた、余計な装飾のないデザインは「なるべく土地に負荷をかけずに住みたい」という齊藤さんの願いを反映してのこと。各階の窓は、どっしりとした根元、青々と茂る葉、新芽の伸びる葉先など、木々の異なる様子が見えるように配置され、一日中どこかから日差しが入る。

「夏の日差しは強いし、木造ならではの寒さも経験した。でも現代の住空間に求められる快適さは、僕にとっては優先順位が高くないんです。自然と人の距離を近づけることに興味と使命感がある」

齊藤さんが種をまき、家族と育てる大木のような家。一家はここで自然をごく身近に感じ、土地に根を張って次の四季をまた過ごす。