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フランスに生まれ育った2人が京都でつくる庭の景色

家庭=家+庭。日本の暮らしの中心には、いつも家と庭がありました。自らの手を動かし、使える庭、見る庭、暮らす庭をつくる住まい手。限られたスペースに緑を取り戻す提案をする建築家たち。いま、みんなが庭に帰ってきています。

photo: Satoshi Nagare / text: Sawako Akune

庭に取り囲まれた家

クリスチャン・メルリオ/アルノー・ロドリゲス

京都の中心部から車で北へと20分ほど。平坦な市街地は山へと突き当たり、坂道沿いに家々の並ぶ住宅街に切り替わる。クリスチャン・メルリオさんとアルノー・ロドリゲスさんが暮らす集合住宅「NISHINOYAMA HOUSE」が立つのは、そんな坂道の途中。通常の箱形のマンションとは異なり、斜めの屋根が連なりながら一つの大きな屋根をつくる、どこか町家を思わせる建物だ。メルリオさんが話す。

「約2年半前に現在の職を得て、それまでいたパリから京都に移ることになりました。その時にネットで偶然ここを知り、即断しました」

建築家・妹島和世が設計を手がけたこちら。約20枚の大小の傾斜屋根の下に、それとずれながら部屋が配置されており、屋根の下には室内と同じくらい多くの庭や細い路地が生まれる。全部で10ある住戸は、これらを自在につないだもので、それぞれ全く違う間取りを持つ。

「庭のあり方、光の入り方などが住戸によってまるで違う。どこにするかとても迷いました」とメルリオさん。選んだのは通りに面した角の住戸。L字形に部屋がつながり、その外周に大小の庭があるプランだ。リビングとダイニングで囲まれる庭はウッドデッキ張り、エントランスの庭はコンクリート敷き、住戸周辺には共有の庭でもある路地。さらに屋根のある部分とない部分も混在し、それぞれの庭が異なる表情を見せる。メルリオさんたちは、これらを主に大小の鉢植えで彩っている。

「このあたりは坂を下れば市街地へもすぐですが、山をさらに上ると渓谷もあって自然が豊かです。販売所で素朴な鉢植えを買ってきたり、野草を摘んできて植えたりしながらそれぞれの庭の風景をつくっています」
植物の選択に特に基準はないと話すが、道端で見かける雑草や、紅葉やススキなど、日本らしい植物も少なくない。

「日本の植物のたおやかな様子にはとても惹かれます」とロドリゲスさんが話す。
さらに、2人がもう一つ大切にしているのが「内部の庭」だそう。室内のあちこちに置いた一輪挿しに花を活けたり、外に置いてあった鉢植えを花の間だけ部屋に入れたりして、室内にも緑を持ち込んでいる。

「フランスにいる時から一輪挿しは持っていましたが、単なるオブジェに近い使い方でした。京都に住むようになって、その本当の使い方がわかった気がします。長い茎がつくる曲線なども愛でるんですね」
室外と室内の境目を曖昧にした建築とも相まって、庭の中に身を置くような住まいとなっている。