祖父江慎(ブックデザイナー)
アメコミは見た目が命!
名作カバーを集めてみました。
「アメコミって描く作家がぐるぐる変わっていくし、ストーリーも一定じゃない。だからこそ一号一号の見た目がすごく肝心。表層的なビジュアルが卓越しているところがアメコミらしさであり、面白いところだと思う」
自身も『X-MEN』邦訳版の装丁を手がけた祖父江慎さん。資料用にと膨大にストックされたリーフの中から、これぞというビジュアルを挙げてもらった。
「『バットマン』だとデヴィッド・マズッケリを挙げたい。殺された両親だけを描いたシリアスな表紙は衝撃的。『スパイダーマン』だとまずトッド・マクファーレン。劇画的な動きやポーズが秀逸。彼はリアルな肉体描写だけでなくスーツが破れるなど物質的なリアリティも追求している。
あとはエリック・ラーセンや『X-MEN』のジム・リーも絵がうまい。『9.11』の黒表紙にも驚かされました。
でも個人的には1960年代のゆるい雰囲気のアメコミが好み。ジャック・カービーやボブ・ケインが描くどこか抜けた感じの笑えるかっこよさ。敵もワクワクするような不思議な生き物ばかり。こういうのが正直、一番好っきゃな〜」
SKATETHING(グラフィックデザイナー)
あえて今、90年代のスパイダーマンが
面白いって思うんです。
トーキョー発信のストリートカルチャー。そのムーブメントの陰にこの人あり、スケートシング。彼もまた少年時代にアメリカのポップカルチャーの洗礼を受けた一人だ。
「初めてアメコミを意識したのは小野耕世さん編集の『アメリカンコミックス ポスターライブラリー』。当時僕は12歳か13歳だったんだけど、書店で見てこれはヤバいとすぐ手に取った。ラフォーレ原宿の地下にSF雑誌『スターログ』の専門店がオープンしたのもこの頃。
僕らは、アメコミを広めた小野さんとか『スターログ』の鶴本(正三)さんとか、そういうアメリカンカルチャーを熱心に伝える先輩方の影響をダイレクトに受け取った世代だと思う。
現在の自分の感覚だと、1990年代とかちょっと昔のコミックを今のタイミングで買うのが逆に面白いかなって思います。
当時のコミックの悪趣味なノリというか、そういう持ち味が最高なんです。僕はスパイダーマンに登場する敵キャラのヴェノムが気持ち悪くて化物っぽいところが大好きなんですけど(笑)。去年はそのシリーズを14冊くらいまとめて購入しましたね」