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私が好きな冒険の本と映像。写真家・高橋ヨーコ

五感を解き放つ大自然へ、たった一人で孤独と向き合う旅へ、世界の裏側にあるリアルを求めて……。人はなぜ、冒険に惹かれるのか。その答えを求めて、冒険好きの高橋ヨーコさんに、一番好きな冒険作品を教えてもらいました。観るだけで、読むだけで、心沸き立つ作品。この夏、あなたの常識を覆してくれる冒険作品がここに!

illustration: Ryo Ishibashi / text: Kazuaki Asato / text & edit: Emi Fukushima

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孤独になれない時代に極限の“独り”を疑似体験

アメリカのデス・ヴァレー国立公園で、観光客のいない奥地に行ったことがあります。片道5時間車で走っても、誰ともすれ違わない。夕方頃に着いた目的地は広大な砂漠で、見渡す限り独りきり。孤独すぎて恐怖のあまり、写真だけ撮りまくって、すぐ引き返しました。

昔から独りでいるのが好きで、キャンプや旅をしてきましたけど、“すごい独り”はやっぱり怖い。『イントゥ・ザ・ワイルド』の主人公は独りきりで、2年かけてアラスカまで冒険し、引き返せないところまで来て、孤独に死んでしまう。雄大な自然の映像美と、“すごい独り”の恐怖の対比が強烈です。

映画『イントゥ・ザ・ワイルド』
『イントゥ・ザ・ワイルド』
何一つ不自由のない青年が、すべてを捨て、荒野で死ぬまでの冒険を描いた実話ベースの作品。'07米/監督:ショーン・ペン/出演:エミール・ハーシュほか/ハピネット/DVD品切れ。INTO THE WILD, Emile Hirsch, 2007, (c)Paramount Vantage/courtesy Everett Collection (Photo by Everett Collection/AFLO)[2376]

私は寒い地域が好きみたいで、『極限の民族』のカナダ・エスキモー(現在の呼称はイヌイット)のエピソードも忘れがたいですね。動物の腸をうどんみたいにすする描写が衝撃的で、自分はジャーナリスト的な写真家にはなれないなと思いました(笑)。

『極限の民族 カナダ・エスキモー、ニューギニア高地人、アラビア遊牧民』著:本多勝一
『極限の民族 カナダ・エスキモー、ニューギニア高地人、アラビア遊牧民』
ベトナム戦争のルポルタージュで有名な著者が、自身の手法を確立し、注目を浴びる契機となった3作を収録。現地の民族と寝食をともにし、人類の多様性を克明に綴った。著:本多勝一/朝日新聞出版/品切れ。

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