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私が好きな冒険の本と映像。野外活動家・⼤⽊ハカセ

夏が来た、冒険の季節がやってきた。五感を解き放つ大自然へ、たった一人で孤独と向き合う旅へ、世界の裏側にあるリアルを求めて……。人はなぜ、冒険に惹かれるのか。その答えを求めて、冒険好きの⼤⽊ハカセさんに、一番好きな冒険作品を教えてもらいました。観るだけで、読むだけで、心沸き立つ作品。この夏、あなたの常識を覆してくれる冒険作品がここに!

illustration: Ryo Ishibashi / text: Ryota Mukai / text & edit: Emi Fukushima

限りない⾃由を追い求め、⾃然に⾝を置き、対話する

あの川を下った先はどんな匂いがするだろう。あの⼭で朝を迎えたらどんな気分だろう。そう⾃然に対して考えを巡らし対話する。その好奇心こそが旅を幾段も豊かにすると思います。

映画『⼈⽣クライマー ⼭野井泰史と垂直の世界 完全版』では、思わず嫉妬してしまうほどに熱を帯びた好奇心の究極形を突きつけられます。何⼗年も過酷な⾃然と対峙し、数々の偉業を成し遂げてきた⼭野井さんの、⼭への愛の深さとストイックな姿勢に圧倒されるんです。

映画『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』
『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』
登⼭界のアカデミー賞とも呼ばれるピオレドール⽣涯功労賞受賞歴もある、世界的クライマーの⾜跡を辿るドキュメンタリー。'22⽇/監督:武⽯浩明/出演:⼭野井泰史/U-NEXTなどで配信中。©TBSテレビ

⼀⽅で『アウトドア・ものローグ』は、著者が経験してきた旅のエピソードを交えながら、愛⽤道具を紹介していくエッセイ集。例えばリュックサックの紹介の冒頭に、アラスカ旅の思い出が綴られるように、旅の匂いが⽴ち上ってくる⼀冊です。

読んでいるだけで、⾃然の中にいるような気分に誘われ、疑似的に⾃由を感じられる。そしてまたどこかへ⾏きたくなるんです。

『アウトドア・ものローグ』著:芦澤一
『アウトドア・ものローグ』
『遊歩⼤全』の翻訳者としても知られる「アウトドアの伝道師」によるエッセイ集。愛⽤品について語る32編のほか、アウトドアライフや登⼭、環境問題などまで綴る。著:芦澤⼀洋/ヤマケイ⽂庫/990円。