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私が好きな冒険の本と映像。ライター・根津貴央

夏が来た、冒険の季節がやってきた。五感を解き放つ大自然へ、たった一人で孤独と向き合う旅へ、世界の裏側にあるリアルを求めて……。人はなぜ、冒険に惹かれるのか。その答えを求めて、冒険好きの根津貴央さんに、一番好きな冒険作品を教えてもらいました。観るだけで、読むだけで、心沸き立つ作品。この夏、あなたの常識を覆してくれる冒険作品がここに!

illustration: Ryo Ishibashi / text: Kazuaki Asato

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ゴールではなくプロセスで未知の世界を深く知る

“未知の世界に深く関わる”ことを冒険とするならば、そのためには“目標”ではなく“過程”が大切です。ドキュメンタリー映画『ポーター』で、監督はエベレスト観光客の荷物を背負う重労働を体験します。彼はネパール語に長けていて、道中、ポーター仲間や現地の人たちと仲良くなって彼らのことを深く理解していくんです。

映画『ポーター:エベレストでの秘話』
『ポーター:エベレストでの秘話』
エベレスト観光者が持ち込む大量の荷物を運ぶ“ポーター”。その重労働を監督自ら体験するドキュメンタリー。'20米/監督:ナサニエル・J・メニンガー/Prime Videoで配信中。

またノンフィクション『天路の旅人』で描かれた戦中のスパイ・西川一三は、敗戦を知ってなお現地に残り、足かけ8年も旅を続けました。チベットでは仏教徒として修行し、その後も行く先々で仕事をしながら転々とする。彼はどこかを目指したのではなく、各地に溶け込んでいったんです。

『天路の旅人』著:沢木耕太郎
『天路の旅人』
第二次世界大戦末期、中国大陸に潜入した若き密偵の西川一三は、終戦後も現地に残り、インドまで渡ることに。そんな西川の数奇な冒険をノンフィクションの名手が描く。著:沢木耕太郎/新潮社/2,640円。

そして私自身も長年、長距離を歩く“ロング・ディスタンス・ハイキング”に傾倒して、最近ネパールに移住しました。それもこの場所により深く関わりたくなったから。どんな冒険になるか楽しみです。

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