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私が好きな冒険の本と映像。〈Out of museum〉店主・小林眞

夏が来た、冒険の季節がやってきた。五感を解き放つ大自然へ、たった一人で孤独と向き合う旅へ、世界の裏側にあるリアルを求めて……。人はなぜ、冒険に惹かれるのか。その答えを求めて、冒険好きの小林眞さんに、一番好きな冒険作品を教えてもらいました。観るだけで、読むだけで、心沸き立つ作品。この夏、あなたの常識を覆してくれる冒険作品がここに!

illustration: Ryo Ishibashi / text & edit: Emi Fukushima

かつての好奇心を刺激するディープな未知と対面

幼い頃に憧れていたのは、“知らない世界を見る”という純粋な冒険。紀行番組を観ては、アフリカや南米の大地、独自の暮らしを営む少数民族に思いを馳せていました。しかし成長とともに興味はアメリカの刺激的なカルチャーへ。

音楽やファッションに目移りしていた20歳の頃、偶然観てかつての好奇心を呼び覚まされたのが映画『裸のジャングル』です。アフリカの平原で、主人公が先住民と決死の追いかけっこを繰り広げる物語で、象のお腹に入って肉を貪(むさぼ)ったり、人を串刺しにして処刑したりなど衝撃的な場面の連続。B級感満載ながら、子供の頃に想像した“未知”が詰まっています。

映画『裸のジャングル』
『裸のジャングル』
アフリカ先住民の怒りを買った主人公の逃走劇。'65米/監督・出演:コーネル・ワイルド/NBCユニバーサル・エンターテイメント/1,572円(DVD)。

©1965 by Paramount Pictures and Theodora Productions Inc. All Rights Reserved.

また、『幸福になるメキシコ』も同様。水木しげるさんが旅の随所で興奮していて、道中で仮面に惹かれて何十個も買うところは傑作(笑)。客観的な評価なんて構わず子供のように自分本位に楽しむさまに、一緒になってワクワクします。

『水木しげるの大冒険 幸福になるメキシコー妖怪楽園案内』文:大泉実成/絵:水木しげる
『水木しげるの大冒険 幸福になるメキシコー妖怪楽園案内』
当時74歳の水木しげるがノンフィクション作家と巡ったメキシコ旅の記録。現地で購入した仮面コレクションがカラー写真で並ぶほか、描き下ろしコミックも収録。
文:大泉実成/絵:水木しげる/祥伝社/品切れ。