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歴史ある名物Zooから、ハイテク系まで。世界の動物園事情をレポート!

所変われば、動物園の様子も変わります。歴史ある名物Zooから、先端技術を駆使するハイテク系まで。世界4ヵ国のユニークな動物園について、現地のライターに教えてもらいました。

text: Yuki Nakamori (SPAIN), Azumi Hasegawa (USA), Megumi Yamashita (UK), Chinami Hirahara (THAILAND) / edit: Hiroko Yabuki

スペイン

環境保全の大切さを自然と動物を通じて啓蒙

スペイン初の動物園は、1770年、当時の王様カルロス3世がマドリードのレティーロ公園の一部として造ったものだった。2003年に大規模な法改正があり、現在国内の動物園は動物を研究する大学や研究所の付属施設であることが前提。絶滅危惧種の保全活動や動物学の研究など、学術的意味を持つことが条件とされている。

ビオパーク・バレンシア〉は、市民の環境保全意識の向上を目的に2008年に設立された。檻の中の動物を眺めるのでなく、10ヘクタールの広大な土地に野生の環境を再現。その中に人間が入り、動物を見て、体験する。保全・教育・サステイナブルを3本柱に動物の保護活動を積極的に行う。

スペイン領・カナリア諸島のテネリフェ島にある〈ロロ公園〉は、1972年に150羽のオウムと25人のスタッフによりオウム園としてオープン。鳥をはじめとした400種超、4万頭を超える動物たちがのびのびと暮らしている。水族館も併設し、生物の多様性を身近に楽しく学ぶことができる。

アメリカ

最先端のハイテク園から都会のオアシスまで

規模も技術も世界に先駆けると評判のアメリカの動物園。筆頭は〈サンディエゴ動物園〉。世界初にして最大の“冷凍動物園”を擁する。1975年に設立された同施設では様々な哺乳類の卵子や精子、受精卵、胚などを冷凍保存している。

最後の野生馬といわれる絶滅危惧種のモウコノウマも、1980年代に凍結したDNAを用いて、2020年にクローンを誕生させた。ほかにも約650種、1万2000頭以上の動物を飼育し、最先端の生殖科学を駆使して、稀少種の保護と繁殖を行う。

そして1899年開園、アメリカ最大級にして都市部の動物園としてはワールドクラスの〈ブロンクス動物園〉。誰もが子供の頃好きだった動物に気軽に会えるニューヨーカーの心の拠りどころとして知られる。

バンクシーがヤンキース・スタジアム付近に残していた「ブロンクス動物園のヒョウ」という絵も話題になった。なるべく檻や柵を使わない、野生の環境に近い飼育スタイルを採用しているので、動物たちも悠々自適、のんびりした雰囲気が漂っている。

イギリス

人中心から動物中心へ、ウェルフェア重視進行中

世界で初めて動物の研究や保全を目的に開設された〈ロンドン動物園〉。1828年の創設時から現在までの飼育施設の変遷を見ると、動物園のあり方の変化も見てとれる。1930~60年代のモダニズム建築の飼育舎はスタイリッシュだが、当の動物たちにとっては窮屈な住まいだったことだろう。

その後、檻に閉じ込められた動物は見たくないという世論が高まり91年には閉鎖の危機もあった。現在は寄付やボランティアに支えられ、動物たちのウェルフェアを第一に考えた、都会の真ん中の動物園として愛されている。

今年で創設60周年を迎える〈コルチェスター動物園〉では、24ヘクタールある自然公園内に240種の動物がのびのびと飼育されている。ここでは一般の人が特定の動物のスポンサーになるという募金方式も成果を上げている。ゾウやキリンにエサをやる体験も人気だが、現在政府は動物園でのゾウの飼育を禁じる法案も検討中。動物たちの幸せを願いつつも、「ゾウさんがいない動物園は寂しい」と、反対も少なくない。

タイ

人との交流を重視!交配による新種も話題

檻の中の動物を見学するのではなく、動物たちと触れ合う機会が多いのが、タイの動物園の特徴だ。例えば約800ヘクタールと世界最大級の面積を誇る〈カオキアオ動物園〉。

山を切り拓いた開放的な環境で、約300種の動物たちが野生さながらに暮らす“オープンズー”スタイルで、車やカートで巡りながら自由にエサやりができる。絶滅危惧種のコウノトリやペリカンの野生化プロジェクトも発足し、タイ国内の動物保護活動を牽引する存在だ。

2023年6月24日に全面開園予定の〈シー・アユタヤ・ライオン・パーク〉は、ライオンとトラのミックス、ライガーが目玉。さらにライオンとライガーを交配させてタイ初のライライガーを誕生させ、世界的に注目を集めている。記念撮影で思わずメロメロになってしまう人も続出。

「無添加のエサを与え、自然に近い環境を再現することで、動物たちの健康と安全な暮らしをサポートしている」と同園の担当者。動物愛護の意識も強まるタイの飼育環境は、幸せが最優先なのだ。