布いっぱいに配された大胆な幾何学模様、カラフルな手と手のしわのモチーフ、繰り返される色と形。エネルギー溢れる色彩と、躍動感ある独創的な模様に彩られた染色布。〈女子美アートミュージアム〉で開催された『柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡』展に、孫の丸山祐子さんと訪れた柚木沙弥郎さん。
注染布や型染布など初期作品から近作まで。ほかにアイデアスケッチのスクラップブックなど、柚木さんの創造の源に触れる展示や、長年携わった女子美工芸科の記録写真、ノートなど、取り上げられることが少ない指導者としての資料の展示も。
柚木さんは会場を見渡すと「夢中でやってきたんだね。こんなにたくさん、よく作ったもんだ」と語り、自身の足跡を振り返っていた。
毎日、手で作る
面白いと感じる
大きな窓から自然光が入るアトリエと居心地のよいリビングルーム。この秋、100歳を迎えた柚木さんは、お気に入りのモノに囲まれた空間で、日常にある“面白いと思うこと”を見つけながら、日々「作ること」と向き合っている。
20代で柳宗悦が提唱する「民藝」と出会い、工芸作家の芹沢銈介の型染カレンダーに魅せられて染色家を志した柚木さん。女子美術大学で教鞭を執りながら、「注染」や「型染」という表現を駆使し、75年にわたり独自の作品を作り続けてきた。その間、染色以外にも、柚木さんはさまざまな表現に挑戦。ポスターやロゴなどのデザインも数多く手がけ、70歳を過ぎてから絵本や版画の制作にも取り組んだ。
「自由になったのは80歳を越えてから」と語り、97歳でパリでの展覧会も成功させた。柚木さんの周りには、国や世代を超えて、さまざまな人々が集まり、創作の場はさらに広がり続けている。
「いつでも、今やっていることを面白いって感じながらやることが大事。絵を描いたり、型を彫ったり、紙を切ったり、のりで貼ったり。うまくいかないこともあるけれど、そういうことも含めて手で作ることは面白い。こうして、今も好きなことを仕事にできているというのは、幸せなことだなと思うね」。そう言って、両手をパッと広げて見せてくれた。