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「ワイン酒場」を拡張する点心師×ソムリエのタッグ。幡ヶ谷〈yum〉

仲間と「中華を食べに行こう」となったとき、しばしば挙がるのが「ワインがある店がいいよね」という声だ。同時に、近年「ワインが楽しめる中華」の店はバリエーション豊かに増え続けている。ここでは、話題の店〈yum〉を紹介しよう。

photo: Jun Nakagawa / text: Kei Sasaki

モダンチャイニーズ出身、ハイレベルな点心酒場

幡ヶ谷にオープンした点心とワインの店〈yum〉に注目だ。飲茶(ヤムチャ)を楽しめる店は多々あれども、ナチュラルワインを揃えたバルスタイルは新しい。味わってみると、カジュアルだけじゃない魅力がある。

幡ヶ谷〈yum〉の飲茶とワイン
左、点心(蒸)盛り合わせ1,100円。蒸籠(せいろ)の中は左から時計回りに、小籠包、帆立とニラ 四川風、鶏とクレソン。右、牡蠣とハモンセラーノ 春巻(揚)1,200円。グラスワインは約6種1,000円~。

厨房に立つ西原みのりさんは、中国料理を志したときから点心に魅せられ、一心に技を磨き、点心師として活躍してきた。勤めた店はグランド ハイアット 東京〈チャイナルーム〉からミシュランガイド1ツ星のモダンチャイニーズ・麻布台〈シリーズ〉、西麻布〈蓮〉まで高級レストランばかり。が、いつしか好きなものを好きに食べられる酒場をやりたいと考えるようになる。賛同してくれたのが〈シリーズ〉〈蓮〉のソムリエ、渡邉與義(くみよし)さんだった。

A4サイズに収まるコンパクトなメニューに、小籠包や焼売、水餃子に春巻きなどの生地ものの点心を中心に、30種の料理が並ぶ。小皿で3ケタ価格からと気軽だが、生地の食感、素材の組み合わせや香りの効かせ方などレストランで培った緻密な仕事が生きている。まるで多皿のコースの中から好きなものだけを食べているかのような楽しさだ。

渡邉さんの接客も「ここではペアリングなど難しいこと抜きに」とリラックスさせながら、ボトルで通すか、グラス派か、要望に応じた柔軟な提案が、レストランでのキャリアを感じさせる。飲食店で働く前、和酒に強い酒販店〈いまでや〉でも働いた経験から、フランス、イタリアを中心としたナチュラルワインに加え、日本ワインの紹介にも力を入れている。ガストロノミーのドレスダウン感は、中華としてもワイン酒場としても新鮮で、繁盛店が割拠する町でユニークな存在感を放っている。

ワインを選ぶ渡邉さん
ワインを選ぶ渡邉さん。