新中野の中華〈湯気〉はフラワーショップ〈ラブレター〉とのハイブリッド!前代未聞の取り合わせは一体どんな狙い?店主の田口雄一さんに訊(き)くと「別々の店にするより、お金がかからないから」と、お洒落じゃない答えが返ってきた。

アパレルの企画、出版社勤務とカラフルな人生を歩んできた田口さんは、おいしいもの好きが高じて足を踏み入れた料理教室で、中華に“引き込まれて”しまった。コアな中華好きや料理人が畏敬の念を込めて「道場」と呼ぶ教室を主宰していた故・佐藤幸男さんを今も師と仰ぐ。
「所作が格好よく、食材がすべて美しく、クラシック音楽の彩りがあって。中華ってかっこいいって、心を撃ち抜かれちゃったんですよね」
家庭向けだが「お手軽」とは一線を画す教室の料理は、新鮮な季節の食材を基本に、下ごしらえから余すところなく使う方法まで、食の理(ことわり)に根ざすもの。塩味の軽い炒め物から、クタクタに火を通し野菜の滋味を引き出す煮込みまで、〈湯気〉の味にきちんと受け継がれている。
ワインとの出会いは〈ラブレター〉店主の妻・memeさんに負うところが大きい。「俺は焼酎好き、ワインなぞ飲まん」とかたくなだった田口さんを「ぬか漬けみたいなワインなら飲んでみたくない?」と、ナチュラルワインの立ち飲み〈バー・ア・ヴァン メゾン サンカントサンク〉(現在は閉店)に連れていってくれたのだ。
memeさんの狙いにすっかりハマって、ワインは開業時から店の大切なパーツに。仮店舗での営業を経て開いた現〈湯気〉は、店舗設計を手がけたデザイン事務所とも一部空間を共有し、料理にワイン、花といろんな目的で集まる人の社交場になっている。



