文・長井短
キャパオーバーでパニックを起こし、脳が活動を停止していよいよなにもわからなくなった時「この気もちはなんだろう」という言葉が視力検査のランドルト環みたいに遠くに浮かぶ。
すぐには読めなくて、1字ずつ、丁寧に文字を追っていくと、それは私の頭の中であると同時に、谷川俊太郎の「春に」だとわかる。よろこびで、かなしみで、いらだちで、やすらぎで、あこがれで、いかり。私の体を流れる気持ち、その全部が本当で、嘘偽りない私という存在を形作っている。全部ここにあって、全部感じられている。
なぜか今、好きだと叫びたくなる。私は生きることが好きだ。谷川さんの詩は、いつもそれを思い出させてくれる。