身を挺して、表現をし続ける
強い覚悟を持ったアーティスト
アートは、しばしば作品を通して想像を超えた価値観に人を対峙させる。しかし、作品すら介さず、自分の身体を晒して表現するマリーナ・アブラモヴィッチが2010年にMoMAで行ったパフォーマンスが、「The Artist is Present」だ。
彼女は1日8時間休みなしで身動きもせずギャラリーの椅子に座り、訪れる鑑賞者とただ目を合わせる。それだけなのに、感情が揺さぶられ泣きだす人もいたという。言葉を交わさなくとも、彼女の覚悟や集中力、それまでの人生すべてが伝わったのだろう。
彼女は、自分を追い詰めることで人間の身体や精神、他者との関係性の限界を伝える。その極めて厳しい姿勢は、一方で包容力を感じさせる。
談・田中みゆき