一人、悲しい夜が来ても
歌声がそっと心を支える
私だけ悲しい夜が、年に数回ある。その夜は静かで、一人ぼっちで、とても長い。1分が1時間に感じられるほど時間はゆっくりになって、だから何も私に届かない。
近づくほどに遅くなって、届きそうなのに届かない愛情と体温を前にいよいよ泣いてしまった時、私の内側に隠れていた研ナオコが立ち上がる。そしてゆっくり、小さな声で歌いだすのだ。
ナオコの歌声は、笑っちゃうくらいに悲しい。その悲しみは、きちんと私に届く。声にならない私の叫びとピタリと一致する声に、私はようやく、辛さを丸ごと認めようと腹をくくる。
ナオコ、私今辛いの。するとナオコは歌うのだ「あたしをたずねておいで」。今夜もお世話になります。
文・長井短