周囲のおせっかいと
逃げた女房への未練で
頑固な男が変わっていく
嫉妬する健さん。チッと舌打ちする健さん。慌てる健さん。酔い潰れる健さん。キーッとなって枕を投げつけてしまう健さん。これほどまでに感情を露わにする健さんを観られるのはこのドラマをおいてほかにない。
脚本は山田太一。健さん演じる電鉄会社社員・立石が赴任先の北海道で逃げた女房・志津江(大原麗子)とその恋人(杉浦直樹)と出会ってしまう。面白いのは、実直で不器用で融通の利かない立石が「誰もが思い描く高倉健」キャラであることで、女房をめぐる三角関係と周囲のいらぬお節介とで「高倉健ぽさ」を崩壊させてしまう。
地方の再生、夫婦の再生、高倉健(当時61歳)の再生。おそるべし山田太一。
文・辛島いづみ