利害を挟まない純粋な慕情に
自らの青春時代へ思いを馳せる
大人になると、人付き合いにはどうしても利害関係が絡んでしまいがち。ただ純粋に誰かにやさしくなれたのって高校生くらいまでだったな、とノスタルジックな気持ちにさせられるのが本作だ。
描かれるのは、休み時間の教室や放課後の体育館、図書室などで起こる高校生たちのささやかな出来事。ボソボソとしたセリフや互いの距離感、交わされる視線に表れるのは、キラキラ青春映画のようなわかりやすい友情や恋愛ではなく、「好き」とは言えなくてもどこか心が通じ合うような、ささやかな慕情。自らの幸福な思い出が甘く刺さる。
談・佐々木敦