たわいもない恋バナから広がる
ゆるやかな理解と共感
今泉力哉監督は、“空気”という目に見えないものを撮るのがうまい映画作家だ。
中でもよくできているのが本作の後半、主人公が出会って間もない女の子と家でひたすら恋バナをする長回しのシーン。お互い徐々に、相手が背負っている関係性や、自分に話してくれる物語に共感していく空気感が、セリフや会話のテンポ、役者の口調や表情などからうまく映像に表れている。
恋心や下心とは別物の、やさしい空気が2人の間にフェードインしてくる感覚。テレパシーみたいに心が通い合うゆるやかな共感も、やさしさなのだと気づかされる。
談・佐々木敦