劇的なことのない淡々とした日常は
決して揺らぐことのない
信頼と愛情があってこそ
柴犬のポン太と飼い主のりえ子が淡々と散歩をする日常を描いた本作。ちょっと上から目線のポン太が、りえ子の一挙一動に心の声でツッコミを入れて展開し、一見互いをねぎらったり慰めたりするようなやさしいセリフはないのだが、その根底に窺えるのは絶対的な愛情と信頼。
映画ではよく、バディを組む凸凹コンビが、普段は互いに憎まれ口を叩きながらもどちらかの危機に全力で手を貸すように、彼らもいざ危険が迫れば助け合うだろう。
ちなみに、通常の犬マンガならば、物語の先には必ずといっていいほど犬の「死」が待ち受けるが、本作は回ごとに時間軸が前後するため、悲劇を意識しなくていいのも読者にやさしい。
談・佐々木敦