根拠のないフレーズに
涙する人もいる
「よく見ると良いことだってあるんだよ 深夜急行千歳船橋」。
どうしてこの短歌に、こんなに胸を貫かれてしまうのか、私はよくわかっていない。でもきっと、後悔をいっぱい乗せて走る深夜の電車たちがこの短歌を聞いたらわんわん泣いちゃうだろう。私も泣いちゃう。
詠んだホストの方を、私はこれっぽっちも知らなくて、きっと今後出会うこともないのだけれど「良いことだってあるんだよ」って、なんの根拠もないのに言い張ってくれたあなたには、ずっとそう言い続けてほしいなと思う。根拠のない頼もしさにしか救えない夜があるから。
文・長井短