Live

Live

暮らす

旬の野菜も立派な花材です。花道家・渡来徹は、食べる前にいける

栗にかぼちゃに柿、冬瓜、きのこ類。実りの秋は花材も豊富です。まな板に載せる前にうつわに据えて、まずは目で味わいましょう。

Photo: Junmaru Sayama / Text: Toru Watarai

料理を皿に盛り付けるように
うつわを取り合わせていける。

花屋に行くより八百屋(あるいはスーパー)に行く方が圧倒的に多い、という人が大半ですよね。食は暮らしそのものですから当たり前の話です。ならば八百屋(あるいはスーパー)に並んでいる、もしくは家庭菜園で育てた野菜や果物を食材として調理する前に、花材としていければ多くの人にとっていけばなはグッと身近になるんじゃないだろうか、と考え形にしたのがこちらです。

ドーン!冬瓜!ナス! ブロッコリー! ラディッシュ!うつわは野菜の形からインスピレーションを得てチョイス。おちょこなどもおすすめです。

お分かりかと思いますが、ブロッコリーは平野レミさんへのオマージュです。

「いやいやいや、野菜を載っけただけでしょ」とお思いですね? その通りですがそれだけではありません。植物のサイクルにあって、エネルギー貯蔵庫たる根菜類、花は生殖器ですし、果実は種子を遠くに運ぶため、もしくは育むための仕掛けに溢れています。このようにいずれもが種をつなぐ生の極みを表す存在。これらが露地栽培のものならば、まさに旬をいける、季節の知らせとなりえましょう。こうして考えれば、野菜や果物はいけばなの材料として最適なのです。

センスとは、経験によって導かれる判断を指しますから、花を上手に飾りたいと思えば、繰り返し花とうつわの関係性を考えるのが近道です。色、形、質感に季節感、時にボリューム感。これらを軸に取り合わせを考えるのは料理も日々のコーディネートも、そしていけばなも同じ。意外性を出すのも無難に収めるのも各々の判断、趣味嗜好で間違いはありません。ただ個人が表れるだけです。

粉を吹いた冬瓜は鈍く光る大中和典さんの小鉢に。

だからこそ、己を信じ、頼るに足る経験をいかに稼ぐかを、生徒を預かる身として考え、結果としてインスタグラム(ハッシュタグ#yasaikebana)で皆さんにお知らせしているのです。花の代わりに野菜や果物を使って、野菜室に入れる前に、まな板に載せる前に、うつわに“いけて”ください。

*いけた後は美味しくいただきました。

家庭菜園で育てた野菜には流通規格によらない気ままさがあって、いけばなに使うにはもってこいです。茎ごと切ったナスは、ひょろりとした姿が面白い。