アジェ 木屋町団栗店(京都河原町)
「京都の焼肉といえば、“洗いダレ”とカウンター」と語るのは、関西をはじめ、全国の焼肉店を食べ歩く人気インスタグラマーのアヨンさん。耳慣れない“洗いダレ”とは一体何か?正体を探るべく河原町の〈アジェ〉に向かうと、開店と同時に続々とお客が入店し、1時間後には、ほぼ満席に。みな手慣れた様子でロースターに肉を一気にのせ、食べ頃になったら透明なタレにくぐらせて食べる、を繰り返す。
「洗いダレは京都の〈天壇〉が発祥といわれる、だしのような透明のタレ。味つけは店ごとに違うけど、肉を焼いたあと、サッと“洗って”から食べるのが定番」と、アヨンさん。周囲の卓を見回すと、やはり洗いダレで食べるホルモン類が人気のようだ。
「これがうちの名物」と差し出されたホソは、関東で言うところのマルチョウ。実は〈アジェ〉は京都の焼肉店で最初に塩ホソを出した“元祖”。脂つきの良い見た目に、こってりした味を想像するが、ポン酢入りの洗いダレとの相性の良さが抜群で、ビールがぐいぐい進む。
焼肉やまちゃん(京都河原町)
次に訪れたのは、カウンター焼肉の最注目店〈焼肉やまちゃん〉。先ほどとは打って変わってモダンシックな雰囲気も、京都屈指の日本料理店〈富小路やま岸〉の系列店と聞けば納得。
店主の山岸隆二さんは「焼肉と京料理を無理なく融合させたい」と肉の選定やカット、コース構成を熟考。カウンターでお客とコミュニケーションを取り、黄金のトングで肉をベストな状態に焼き上げる。一品料理と焼き物を織り交ぜたコースには和食の技が盛り込まれ、ここにも京都焼肉の定番“洗いダレ”で食べるホルモンが。
〈やま岸〉仕込みのだしがベースになった温かい洗いダレで食べるミノは、小気味よい食感の中に上品な旨味が感じられ、和食と焼肉のいいとこ取りに、満腹満足。“洗い”という京都ならではの作法に、焼肉の奥深さを見た。
まだまだあります、京都の名店
祗園えばた(祇園四条)
焼きも巨匠に“おまかせ”の夢、実現。
西陣の神話的老舗〈江畑〉の次男、江畑卓弥さんが2021年6月開店。名店直系の素材目利きや、店主が栽培する京野菜に加えての売りは、コース約15品の多くを目の前で店主やスタッフに焼いてもらえる“おまかせ焼き”。
片面焼きで甘味弾けるテッチャン、瞬間焼きでコクが立つレバーほか、神眼光る巨匠の焼きで華麗に跳ね上がる肉の旨味は焼肉文化に開いた祝福すべき偉大な扉。その輝きが14席のカウンターすべてに行き渡る。
肉料理 ひらい(四条大宮)
京都名物“ギャラネギ”を、気軽に。
分厚い松の一枚板のカウンターに42年の歴史と風格薫る和風情のフロア。ご主人は西陣の老舗〈江畑〉から独立。必食は修業先譲りのギャラネギ。ギャラ(=ギアラ、別名赤センマイ)に九条ネギを絡めて焼く、京都名物だ。ギャラを甘く香ばしく、ネギのミネラル感を残して焼くのが本当に高難度なこの一品。
カウンターの目の前のロースターでご主人に流麗な所作で完璧に焼いてもらえるのは、京都焼肉の至福そのもの。
赤提灯 山科店(東野)
塩もみダレで旨味倍増、ホルモンの至福。
1人あたりの牛肉消費量全国1位の京都。その中で磨かれたタレ文化の多彩さ、偉大さを実感するのがこちらの塩ダレ。大量にすりおろしたネギの酸味・甘味・ミネラル感と塩が芳醇に絡んだタレは、特に名物アギプッコチと抜群の相性。
薄切りアゴ肉と刻み青唐辛子、赤唐辛子粉のスパイス感とネギの甘味は、しっかり焼くほど濃厚に。一人2、3皿も注文するというファンも多い。きっとあなたも、その一人になるはず。