気軽で、普通にいいもの。今の時代を映した必需品
金子恵治
田口さんがテーラードやワークウェアに詳しいのは作りを見てわかりました。女性が描く男性服のような面白いものができる気がして〈レショップ〉で別注したんです。
田口令子
〈Y〉を作ろうと思ったきっかけは、素材や作りにこだわったいいものは世の中にたくさんあるけど、もっと気軽に着られて手頃な値段で“普通にいいもの”って意外とないなと思ったから。私は古着もメンズ服も着るし、もの作りの背景的に男女の境界線が溶けていていいという考え方。そのうえで金子さんと一緒に作ることで、想像を超える新しいものになる予感がしました。
金子
その話を聞いて僕がイメージしたのは、一個の箱にがさっと入っていて、男性でも女性でも、適当に取り出して着れば、スーパーにも旅行にも行ける日常のワードローブ。それさえあれば大丈夫という。
田口
カジュアルで、着ることにストレスを感じない服にしたかったんです。汚れたら洗えるし着心地や動いた時のさばきがいい。衣料品としての機能性にこだわりました。
色もサイズも2通りだけ。不思議とサマになる普通の服
シンプルなのに着るとニュアンスが出るのが素敵だなと思いました。
金子
田口さんはベーシックをさりげなくファッションに昇華できる方。横から見たシルエットやフォルムの美しさはほかにはない特徴だと思います。小物に頼らなくても決まる。
ネイビーと白に絞ったのは?
金子
自然発生的でした。白はスーパーベーシック。黒は少し強いから、田口さんの得意なネイビーがあれば、ミニマルでコンセプトにハマるねと。
田口
〈イレーヴ〉のブランドカラーがネイビーなんですけど、〈Y〉は赤みのある色味にこだわって。カジュアルなアイテムでも、このネイビーだと大人っぽく着られるんです。
金子
ヨーロッパのワークウェアのような褪色したいい色味なんですよ。
サイズ展開は1と4。2と3はありません。この考え方は?
田口
男女が共有できるものということで悩みましたけど、男性はちょうどいいフィット感、女性ならルーズに着るようなイメージですね。
金子
一般的なサイズより自分の着たいフィットを探す時代。どんなバランスで着たいかを選べるように、大と小があればOKと考えました。
最後に大人の必需品について。お2人はどのように考えますか?
金子
まさにこういうもの(笑)。個人的には男の定番といわれるアイテムは無意識に必需品になってるのかなと。ドレスアップしたい時も組み合わせ次第でできるんですよね。
田口
〈リーバイス〉や〈サンスペル〉のTシャツのような基本のアイテム。スタンダードだからこそ、ほかの要素を足すことができる。自分の個性とか女性ならヘアメイクとか。ほかのブランドのお洋服を着ることもあるし。同じように〈Y〉は手持ちの服にもいろんな合わせ方ができるし、それだけで主役にもなれる。そんな必需品になれる服を目指せたらいいなと思っているんです。