雑誌で育った僕らとネットを活用する若者。その対比が面白い
1979年生まれの井野将之さんは、90年代後半から2000年代に差し掛かるファッションの変遷を、実際に体感していた。当時の文化を現代の若者が取り入れることについてどう感じているのか、話を聞いてみた。
この前まで昭和が新鮮だと言っていたのに、ついに平成がトレンドになる時代が来ましたか。早いものですね。2002年に就職するまでファッション=遊びだと思っていたので、とにかく自由に楽しんでいました。
溜まり場は大抵、原宿のラフォーレ前。あの頃は週末がホコ天になっていて、もっと人がいたんです。そこに雑誌のスナップ隊がいて、みんな撮られたくて集まったり(笑)。
ストリート系の『Boon』やポップな『Zipper』『CUTiE』、あと個性派は『FRUiTS』。ジャンルは違えど、どの媒体も盛り上がっていました。僕らの時代って、一度この雑誌を買うって決めたら、媒体の色に染まるんですよね。
だけど今の若い子はSNSで好きなものをピックアップするから、いい意味で雑食。“こうあるべき”って考えに縛られないから、純粋にファッションと向き合えるんじゃないですかね。
その一方で、世間的に流行っていたのはギャル文化。90年代を席捲したアムラーやコギャルブームが落ち着いて、浜崎あゆみがカリスマになってきた頃でした。
原色を身にまとい、ミニスカートを穿いて、足元はファーのレッグウォーマー。私無敵!っていう、強いエネルギーを感じますよね。
それこそ1999年は世紀末が近くて、世の中が不安定だったじゃないですか。ノストラダムスの大予言におびえる人がいたり。彼女たちには“ネガティブでいてもしょうがないし、知らねえよ”ってパワーがあって。それが今のコロナ禍に近いようにも感じます。
それもありdoubletの2022年秋冬コレクションは、ギャルをテーマに制作しました。ベロア生地のジャージやルーズソックス、腰穿きしたボトムスから覗くボクサーパンツ。日焼けサロンに行きすぎて、服まで焦げちゃったってルックも作りました(笑)。
今回スナップした人だと、Yuさんが着けているラインストーンでデコったベルトや、箱崎洋平さん(2000年代のカルチャー、略して「Y2K」が再熱!スナップと当時を知るデザイナー・井野将之の証言とともに解析 〜後編〜)が穿いているパンツも、まさに同じテイストです。