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コースでも、アラカルトでも香る中華と選べる酒の全方位型。木場〈香噴噴 XIANG PEN PEN〉

仲間と「中華を食べに行こう」となったとき、しばしば挙がるのが「ワインがある店がいいよね」という声だ。同時に、近年「ワインが楽しめる中華」の店はバリエーション豊かに増え続けている。背景を探りつつ、個性を競う話題店〈香噴噴 XIANG PEN PEN〉を紹介しよう。

photo: Jun Nakagawa / text: Kei Sasaki

木場の静かな住宅街に人を呼ぶ中国料理店がある。九鬼修一シェフが妻の彩也佳さんと2023年に開いた〈香噴噴(シャンペンペン) XIANG PEN PEN〉だ。コース、アラカルトが自由に選べ、ドリンクも出色の品揃え。ナチュラルワインを軸に、台湾産クラフトビール、カラメル色素無添加の紹興酒や台湾のプレミアムウイスキー〈KAVALAN〉などをメニューに並べる。理由は「旨いものを食べるときは旨い酒が欲しいのに、そういう店が少なかった」から。御意!

19歳で料理を始めたときから中華で自分の店を持つことを目標にしてきた九鬼シェフ。やりたいことはすべて詰め込んだフルスペックの店にすべく、修業に20年を費やした。400席近くある大箱の上海料理店で基礎を体に叩き込み、広東料理店やフカヒレ専門店、オーナーシェフのクリエイションで人気を博す東日本橋〈虎穴(フーシュエ)〉と、それぞれの店で設けた課題をクリアして腕を磨いた。本格始動の準備のつもりで木場に開いた担々麺専門店が、予想外にブレイクし、行列ができる店になったのは嬉しい誤算。中国語で「よい香りがぷんぷんする」を表す店名通り、野菜も魚も冷菜も温菜も、薬味や香味油を駆使して芳(かぐわ)しい皿に仕上げ、香りや旨味に複雑さのあるナチュラルワインを提案する。接客は彩也佳さんの担当。夫婦の阿吽(あうん)の呼吸も居心地のよさの鍵だ。