〈ボリビア〉
神秘の塩湖の上で、降る星々に包まれる。
雨期は水面が巨大な鏡に、乾期は水が蒸発し、塩の大地となるウユニ塩湖。太古に海底が隆起してできた湖だが、高低差や流れ込む川がないため、世にも珍しい光景が見られる。
そんな湖の中に立つ唯一の宿が〈カチ・ロッジ〉。
6つあるテントには地元の家具やテキスタイル、アートを飾る。汚水の浄水設備や焼却トイレにより宿で発生する廃棄物を最小限に抑えたり、廃材利用のストーブを採用することで環境への配慮を徹底している。
特筆すべきは夜のビュー。雨期は湖面に星が映りまるで宇宙空間に、乾期は不毛の惑星に降り立ったように。ただし、湖の最高標高は3,760mで夜は冷える。暖かなロッジでくつろぎながら、見事な夜景に包まれるのも楽しい。
〈イングランド〉
360度のパノラマを海上要塞で体感する。
ポーツマス港の沖にある〈スピットバンク・フォート〉は、19世紀の要塞を再利用したユニークな宿だ。長年放置され、廃墟化した要塞の売却にあたり、政府主催のコンペで選ばれたのがホテル案。
かつて150人の兵士を収容した直径50mの要塞は、5年の工事を経て、全9室、定員18名のリゾートに生まれ変わった。アンティーク家具を置く館内には、煉瓦造りの優雅なレストランやバー、ワインセラーなどを設け、ワインやラムの試飲、釣りといったアクティビティも充実。
とはいえ、ここでは壮大な海のビューを満喫したい。ガラスドーム内にある屋上バーからは、港に沈む夕日が目前に。砲台跡に設けられた屋外温水プールで、のんびりくつろぐのも至福だ。
〈ブータン〉
“幸せの国”で手つかずの自然と対峙する。
自然環境そして地域社会との共生をテーマに掲げ、自然派高級リゾートの先駆けとされる〈シックスセンシズ〉が、ブータンに進出。2018年10月にオープンしたティンプー、パロ、プナカを皮切りに、ガンテ、ブムタンの5つのエリアにそれぞれロッジを開業させた。
国の西部と中央部の渓谷に点在する5棟は、立地も環境も建築もさまざま。例えば、プナカ渓谷の高台に位置する、写真のプナカ・ロッジからは谷底へと続く美しい棚田を眼下に、3,000m級の山々を遠くに望むことができる。
急峻な山々に阻まれ、谷間の集落ごとに独特の文化が育まれているというブータン。絶景とともに、それら人々の暮らしに触れるのも、また旅の楽しみだろう。
〈アメリカ〉
ミッドセンチュリーと飛行機のコラボを楽しむ。
〈TWAターミナル〉は1962年に竣工したミッドセンチュリー建築の傑作だ。2019年に〈TWAホテル〉として蘇るや否や、飛行機好きやデザインフリーク垂涎のデスティネーションに。
数ある魅力の一つは、ロビーはもちろん客室からも、飛行機の発着をゆったり眺められること。世界で2番目に分厚いという防音ガラスが、静寂を完全に保ってくれる。
家具や小物に至るまで建築家エーロ・サーリネンの美意識を再現した洗練空間に身を置き、滑走路の景色を楽しむ。
屋上のインフィニティ・プールでは眼下に飛行機を、はるか遠くに摩天楼を望みながらリラックス。空の旅が優雅で、人々の憧れだった古き良き時代を追体験させてくれる、貴重なホテルだ。