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食べる

東京近郊で食べる、世界各国のカスタードのお菓子。ベトナム、インド、スペインetc...

国境を超えて愛されるカスタードクリームのお菓子。アジアではココナッツミルクが代用されたり、イタリアではアテになるフライになったりと、味と形態はさまざま。東京近郊で、その多様性を堪能する旅に出かけよう!

初出:BRUTUS No.931「なにしろカスタード好きなもので」(2021年1月15日発売)

photo: Yoichiro Kikuchi / text: Koji Okano

ベトナムのバインフラン

ノムカフェ(西荻窪)

カラメルソースの上からさらに注がれるのはベトナムコーヒー。その強烈な苦味とカスタードの濃厚な甘味を絡めた異国のプリンが、西荻窪で食べられる。「ホーチミンの市場で出会った、コンデンスミルク入りのカスタードプリンを再現しています」と店主の瀧井智宏さん。特徴的な頂のクラッシュアイスは、体の熱を冷ますと同時に、口内の甘味と苦味を和らげる狙いがある。

インドのベビンカ

エリックサウス マサラ ダイナー(原宿)

カスタードを厚いクレープのように焼き、層状に重ねたケーキ。「旧ポルトガル領・ゴアの伝統菓子。昔は土製オーブンで焼いていたカスタード生地を、鉄板で焼いて重ねるレシピが広まって、定番になったそうです」と店長の船橋友さん。ココナッツミルクを使うため最初は軽い口当たりだが、次第に濃い卵黄の味わいが広がる。ナツメグの風味も爽やか。

ペルーのレチェ・アサーダ

ベポカ(明治神宮前)

本場ペルーの料理をコースとアラカルトで提供するレストラン。「たっぷりの卵黄と、エバミルクとコンデンスミルクで濃厚に仕上げる焼きプリンです」と、日系ペルー人シェフの仲村渠ブルーノさん。オーブンの上火で表面に焦げ目ができるため、カラメルソースいらずの香ばしさ。しっかり火が通ったカスタードクリームとバニラビーンズの風味が食欲をそそる。

フィリピンのレチェ・フラン

ネネスキッチン(赤羽)

「フィリピンで最もメジャーなお菓子。誕生日のお祝いにも欠かせません」。オーナーのレイエス・ロデンさんが再現する長軸10cm超えの楕円形プリンは3、4人でシェアすれば、ちょうどよい分量。食感は硬めで、カラメルソースがたっぷりとかかり、甘さはヘビー級だ。コンデンスミルクとエバミルクを蒸す過程で旨味が凝縮されるため、チーズに似たコクを醸すネネスキッチン。

スペインのクレマ・カタラナ

マヨルカ(二子玉川)

スペイン王室御用達のグロサリーで作られるのはカタルーニャの郷土菓子、クレマ・カタラナ。カスタードの上面に焦がしたカラメルの層がある点はクレーム・ブリュレと似ているが、「カタラナには湯煎や焼成のプロセスがない。カスタードの滑らかな食感、濃厚な風味ををより楽しめるお菓子です」とグランシェフの安類直宏さん。牛乳を使うため後味はすっきりしている。

イタリアのクレマフリッタ

アニコ(赤坂)

イタリア・マルケ州には、バニラとレモン、アニスリキュールを効かせたカスタードクリームを冷やし、固めたフライ料理がある。「仔羊のフリットの付け合わせやアンティパスト(前菜)として、クレマフリッタがお馴染み。白ワインにも合うんです」と赤坂でマルケ料理店を営む井関誠シェフ。塩気の効いたオリーブの肉詰めフリットと合わせる文化も。

中国の蛋黄奶油酥(タンファンナァユスウ)

中華菜館 同發 別館売店(横浜)

明治に創業した、横浜中華街の老舗料理店が提供する広東のお菓子。キモは中国や香港で粥などとともに食される、アヒルの塩漬け卵。これを1時間ほどじっくり蒸したカスタードで包んだら、パイ生地で覆い、オーブンで焼く。中はもっちりとした食感に仕上がって、サクサクのパイ生地と対照的な舌触りに。練乳とバターの風味が強く、塩味があってスナックにもいい。

オーストリアのマーモアクーゲルフプフ

カフェ ラントマン(青山)

ココアとラム酒が効いたパウンドケーキ・クグロフに、バニラビーンズで香りづけしたカスタードソースを添えた一皿。1873年にウィーンで創業した老舗カフェの海外第1号店で食べられる。「ほかにもアップルパイなど、オーストリアではよく焼き菓子にカスタードソースを浸します」と渋谷達也シェフ。“追いカスタード”でリッチな味わいに。食感も軟らかくなる。