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2024年“バーテンダー世界一”は誰だ?「WORLD CLASS」上海大会をスペシャルレポート!

世界でも最大規模となるバーテンダーとカクテルの競技大会、それがディアジオ「ワールドクラス」。国境や文化の壁を越えて世界44の国と地域から集まったバーテンダーたちが、世界No.1をかけて挑む大会だ。2024年の世界大会は9月、上海で開催された。昨年のブラジル・サンパウロ大会に続き、『BRUTUS』はその模様を現地取材。特別レポートします。

photo & edit & text: BRUTUS

「ワールドクラス」が拡げる、バーとカクテルの世界

国際的なスピリッツメーカー、ディアジオが主催する世界でも最大規模のバーテンダー競技大会が「ワールドクラス」だ。年に1回開催されており、2024年で15回目。その世界大会は9月に上海で開催された。ワールドクラスは数十カ国で開かれる国別予選でまず代表選手を1名ずつ選出。その全員が集まり、世界大会=グローバル・ファイナルが行われるシステムだ。

会期中、選手たちは各種のチャレンジ(=テーマ別の競技審査)へ挑む。採点の結果で人数が絞られていき、最終審査を経て選ばれるのはたった1人。その年を代表する“GLOBAL BARTENDER OF THE YEAR”、すなわち世界一バーテンダーが決まる。これまでも『BRUTUS』では複数回この大会をお伝えしてきたが、今年2024年もこの上海大会を現地で密着取材。その様子と結果をレポートしよう。

ワールドクラス2024の様子
2024年の開催地となった都市は中国・上海。高層ビル群の夜景をバックに、ゲストを招いてオープニングパーティーが開かれた。

世界大会の開催都市は毎回変わる。2023年の南米ブラジル・サンパウロから、今年2024年は舞台をアジアに移し、上海が決戦の地に選ばれた。会期は9月7〜13日の1週間。その初日、44の国と地域から各代表1名ずつの選手と、その関係者やサポートメンバーが会場へ続々と集まってきた。メイン会場となるのは「W 上海」。上海の中心部を流れる黄浦江に沿って立ち、対岸エリアに林立する超高層ビルを目の前にしたラグジュアリーホテルだ。

関係者やゲストたちが世界中から集まった初日、ウェルカムパーティーが開かれた。ホテルから少し離れた船着き場まで移動したゲストは、用意された会場となる客船へ乗り込む。屋外デッキ、上海の夜景に囲まれる中で華やかな大会の幕開けが今年も宣言された。今大会のテーマは「FUTURE LEGACY」。歴史と最新が交差する都市、上海にふさわしいイベントを予感させるものとなった。

様々なチャレンジが選手たちを待ち受ける

ワールドクラスがあまたのカクテルコンペと違う最大の特徴は、選手たちが挑む審査が多岐にわたり、また課題となる酒類も複数あること。ディアジオグループが擁するウイスキー、ジン、ウォッカ、テキーラ、ラムなど各ブランドのスピリッツが課題となり、その年ごとに工夫の凝らされた様々な競技が行われる。

バーテンダーとしてカクテルを作る基本的な技術は当然のこと、もととなるアイデアやクリエイティビティ、それぞれの課題への理解と対応、さらにスピーチを含むプレゼン能力、そして審査員に対するサービス力まで、求められる要素は多く、また幅広い。

当然ながら、競技やその前後ではハプニングやトラブルもつきもの。むしろ、それらに柔軟に対応できる選手が残ることになる。また審査は常に多数のゲストやギャラリーが見守るため、よいプレゼンにはオーディエンスからも歓声が集まり、場は盛り上がる。その空間ごと掌握するような選手が上位に進む可能性は高い。

大会1日目、最初のチャレンジは「HAIPAI-LOCAL」。テキーラ「ドン・フリオ」を使って、自身のホームタウンと開催地・上海、それぞれの土地やストーリーにインスパイアされたカクテルを1杯ずつ提供するというもの。試技は1人ごとに行われ、これに2人の審査員がつく。

2つ目のチャレンジは「FUTURE STRIDE」と題して、ウイスキーの「ジョニーウォーカー ブルーラベル」で1杯のカクテルを提供するもの。テクノロジーによる新しい体験がテーマで、VRや3Dプリンターなどの技術を取り入れたユニークなプレゼンが繰り広げられた。

チャレンジルーム
熱演が続くチャレンジルーム。4つのグループに分けて同時並行で審査が続く。

今回の世界大会へ挑んだ日本代表は、石岡雅人。1990年北海道生まれ、もとはショコラティエとして活動したキャリアを持つ。東京・銀座『ブルガリ ギンザ バー』から参加した日本大会で優勝し、世界へ初挑戦(その2024年日本大会の様子を追ったBRUTUS.jpの記事はこちら)。若干緊張の色を見せつつも、落ち着いたトーンで競技へ挑んでいく。

彼を含む全選手は、ステージで次々と試技を披露する。3つ目の競技はジンの「タンカレー ナンバーテン」をテーマにした「INDUSTRY LEGENDS」。バーテンディングの過去、現在、未来をテーマにしたカクテルを1杯ずつ、計3杯作る。カクテル作りに負けぬほど、そのストーリー作りも問われる課題だ。

そして4つ目の競技はスコッチウイスキー「シングルトン」を使った「SENSE THE MOMENT」。審査員はヘッドフォンを着用し、選手側が用意した「音」を聞きながらカクテルを味わうというもの。ストリートのざわめき、派手なディスコ、荘厳なコンサートホールなどをイメージした音楽や、ときに雑踏や市場などのサウンドエフェクトを、それぞれの選手が思い思いのシーンとして流し、味覚とともに新しい体験をもたらす、その演出力が問われた。

チャレンジと併せて多数のイベントも

さらに大会期間中、ホームタウンとなる上海市内の数多くの人気バーでは、この大会に合わせたゲストシフトやブランドとのコラボイベントが開かれた。さらに、審査員として参加する多くの著名バーテンダーや評論家などのプロフェッショナルによるセミナー、ワークショップ、フォーラム、各種ブランドセミナーなどが、会場ホテルの各スペースで審査の合間にも活発に開催された。

こうした機会によって選手たちだけでなく、世界中から集まったさまざまなゲストたちも新たな発見を得て、意見が交換され、またアイデアも共有されていく。「ワールドクラス」を象徴する、もう一つの側面でもある。国境や文化の違いを超えて、バーとカクテルの価値を高める、というそのスタンスは初回から変わらない。

大会3日目の夕刻には、ここまで各チャレンジに挑んだ44人の全選手がチャレンジホールに再び集合。記念撮影のあと、ファイナリストとして8人の名前がコールされた。

ファイナルチャレンジに挑む8名の選手たち
審査を勝ち抜き、ファイナルチャレンジに挑む8人の選手たち。

ファイナリストが決まったら、彼らは寝る時間もなく準備に取り掛かる。最終審査は翌朝から。その名もズバリ「SHANGHAI SHOWDOWN」──上海の最終決戦だ。運営からの課題は「選手一人ずつ、会場に小さなポップアップ・バーを作り、バーテンディングの境界を乗り越えて、未来のカクテル文化を示す時間を演出しなさい」というもの。準備時間の中で、ファイナルに残れなかった他国選手から2人をサポートとして指名し、ともに協力しながら小さなブースを会場内に作り上げていく。

デコレーションもそれぞれの考えたコンセプトで、またメニュー作りも必要だ。そうして出来上がったバーを、審査開始とともに6人の審査員チームが順繰りに訪れる。店主として彼らをもてなしつつ、ドリンクをプレゼンし、提供していく。バーテンダーとしてまさに総合力が求められる濃密な時間が終わり、すべての競技は終了した。

上海でも複数のバーを運営し、世界的に著名なバーテンダーの一人である後閑信吾氏も、今大会で審査員チームに初参加。すべての審査を終えて振り返れば、選手たちがいかに課題として求められたことをやれたか、味わいの質が高いか、バーテンダーとしての仕事は綺麗か、またそれらが意味を持って一貫しているか──を問われる大会だった、と彼は言う。

ワールドクラス2024、世界No.1のタイトルは、カナダへ

すべての競技と審査が終わり、ゲストたちは会場ホテルの屋外テラスに用意された特設ステージへ集まる。各部門賞の発表が順に進み、いよいよ「バーテンダー・オブ・ザ・イヤー」のコール。その称号を手にしたのは、カナダ代表のキーガン・マクレガーだった。前年のジェイコブ・マーティンに続いて、カナダは2大会連続。優勝アナウンスの瞬間、過去の歴代チャンピオンたちが壇上へ駆け上がり、彼を手荒く囲んで世界チャンピオンの仲間入りを祝福する。「ワールドクラス」恒例のフィナーレだ。

歓喜の瞬間だが、一方で優勝したらそれがすべて、ではない。多くの世界的な競技がそうであるように、勝者にとってこれは次のステージへの第一歩。彼らは講師やアンバサダーとなり、世界各国を回ってバーの現場で、またメディアを通じて、より多くの人々に影響を与えていく。続く世代のトレーナーとして、さらに今度は審査員や運営サイドの一員としても、なすべきことは多い。

優勝のコールは、次のチャレンジの始まりでもある。歓声が交差する会場で、最後のアナウンスは「次」、そう来年2025年大会の発表だ。その開催都市は、なんとカナダ・トロント。大会連覇のカナダ代表チームはその発表でさらにお祭り騒ぎに。一方で、惜しくも結果が出なかった各国チームの面々も次こそはここで、と改めて照準を定める。

過去の優勝国を見渡しても、開催国が特段に有利とも言えないのがワールドクラス。今大会でもタイやインドネシア代表が爪痕を残し、アジアの勢いを実感させた。過去に2人の優勝を出している日本にも、もちろんチャンスはある。次の未来への挑戦は、もう始まっている。ワールドクラスは常にバーテンダー、そしてバーカルチャーの絶え間ない進歩とその先も象徴しているのだ。

カナダ代表キーガン・マクレガーを囲む、歴代の世界チャンピオンたち
中央・カナダ代表キーガン・マクレガーを囲む、歴代の世界チャンピオンたち。

世界のベストバーテンダーを目指して!「WORLD CLASS 2024」日本大会、決勝レポート