ようこそ、世界一のファインミネラルギャラリーへ
photo: Rie Yamada / text: Yusuke Uchida / edit: Shogo Kawabata / coordination: Akiko Watanabe
本記事も掲載されている、BRUTUS特別編集「合本 珍奇鉱物」は、2023年12月5日発売です!
珠玉のコレクションの中から、そのハイライトを厳選!
トルマリン
Tourmaline
トルマリン/レピドライト/ゴシェナイト
Tourmaline with Lepidolite and Goshenite
トルマリン/アルバイトTourmaline with Albite
トルマリン/アルバイト/フェルドスパー/レピドライト
Tourmaline with Albite and Feldspar and Lepidolite
インディコライト/レピドライト/クォーツ
Indicolite with Lepidolite and Quartz
アングレサイト/ガレーナ
Anglesite with Galena
ウーバイト/クォーツ
Uvite with Quartz
ロードクロサイト/シルバー
Rhodochrosite with Silver
ビビアナイト
Vivianite with Matrix
アメシスト/クォーツ
Amethyst with Quartz
ゴールド/クォーツ
Gold with Quartz
カルサイト/フローライト/クォーツ
Calcite with Fluorite and Quartz
コバルトアラゴナイト/カルサイト
Cobaltoan Aragonite with Calcite
ようこそ、世界一のファインミネラルギャラリーへ
ドイツ南西部、フランスとスイスの国境付近の小さな町、ミュールハイム。ヴィルドファング氏の経営する会社の一角に、そのプライベートギャラリーは隠されたように存在する。
世界規模で展開するグローバル企業の経営者で、多忙を極めるスケジュールの中、幸運にも彼自身の案内でギャラリーを見学することができた。まるで金庫室のような重厚な扉を開けると、そこは温度と湿度が完璧にコントロールされた美術館のような空間だった。
「ここには22台のイタリア製のオーダーメイドキャビネットの中に、1000以上の標本が陳列されています。また、中に陳列されている標本すべてにベストなライティングが当たるよう、特別に調整されたLEDライトを取り付けてあります」
膨大な数の標本の一つ一つが極上のワールドクラスという、文句なしに世界最高のファインミネラルギャラリーだろう。展示からプレゼンテーションの細部に至るまで、まるでアートギャラリーにいるようだ。また彼の標本のセレクションは、形状、配置、バランス、色、個性、独自性、これらすべてに妥協がなく、非常に洗練された美意識が貫かれている。
このようにオーナーによる美学が隅々にまで反映されたコレクションを構築することは、コレクターが目指すゴールの一つだと思う。また、このギャラリーの美しさを引き立てているもう一つの要因に、ラベルや解説の類いがなく整然と美しい標本のみが並んでいることがある。
「まずは、なんの先入観もなく標本そのものの美しさを楽しみ、気になった標本があったら、ギャラリーの入口にあるQRコードをスキャンすることで、標本画像とともにデータを読み込めるシステムになっています。鉱物標本の写真は写真家に依頼することもありますが、その多くは自分で撮影を行っています。オフィスの片隅に小さなスタジオを作り、ランチタイムのわずかな時間に、ファインダー越しに鉱物と向き合う時間が最高の息抜きになっていますね」
ヴィルドファング氏が収集を始めたのは7歳の頃。彼の故郷は古代からクォーツやフローライト、バライト、鉛や銀の鉱山で有名なエリアだった。既に閉山していたが、その鉱山跡をフィールドコレクターたちに交じって訪れるうちに、強く惹きつけられるようになっていった。
その後、両親の協力のもと、鉱物書『Der große BLV Mineralienführer』の中のサンプルを集めることに夢中になったり、ルール大学で鉱物学の教授をしている叔父のコレクションからも大きな影響を受けた。
「そんな中でも一番の大きな影響は18歳の時、隣町に住む当時ヨーロッパのトップコレクターだったヘルムート・ブリュックナーとの出会いでした。世界有数の彼のコレクションに触れ、審美的な視点で美しい鉱物をコレクションしていくことに傾倒するようになったのです」
その転機となった出会いから30年、彼は経済的成功を成し遂げるにつれ、より洗練されたコレクションを増やしていき、世界最高のファインミネラルギャラリーを誕生させたのだ。