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270年の歴史を刻む、スイスの時計メゾン〈ヴァシュロン・コンスタンタン〉

創業から長い間、真摯に時計製作に向き合ってきた〈ヴァシュロン・コンスタンタン〉は、他を圧倒する技術力と伝統的な手仕事の両面で時計ファンを魅了し続ける。


本記事は、BRUTUS「時計とスタイル。」(2025年11月4日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

illustration: Shinji Abe / text: Norio Takagi

1755年に創業して以来、一度も途切れず今日に至っているという点において、スイスでも最古の時計メゾンである。美を重んじるジュネーヴスタイルを古くから継承し、多様な複雑機構を実現できる技術力を長く研鑽してきた。その成果の一つが、2025年に発表されたスペシャルな一本である。

両面にダイヤルが備わるダブルフェイスには、実に41個もの機構が備わっている。公式アナウンスによれば、「メゾンにおいてこれまでにない最も複雑な腕時計」であるとか。

41機構の内訳は6つの計時、8つの暦表示、3つのムーンフェイズ表示、14の天体表示、5つのチャイム機能、4つのスプリットセコンド、そしてパワーリザーブ表示。その中にはダイヤルからは見えないトゥールビヨンが含まれ、チャイム機能は4つのゴングを打ち分けるウエストミンスターであり、まさに究極の複雑さを目指したとわかる。しかも、これらを統合したムーブメントCal.3655が直径36㎜、厚さ10.96㎜という常識的なサイズに収まっていることも、驚きである。

ジュネーヴの工房では、ギヨシェ彫り、多彩なエナメル技巧、ジェムセッティングなどなど、さまざまな工芸技術も培われてきた。これらメティエ・ダール(芸術的手仕事)を駆使して、毎年異なるテーマで登場する限定コレクションを待ちわびるコレクターも数多い。

時計製作と工芸の技術に、3世紀近い歴史が息づく。

〈VACHERON CONSTANTIN〉Métiers d'Art-Tribute to The Celestial
Métiers d'Art-Tribute to The Celestial
「メティエ・ダール」コレクションから今年発表された一つ。12星座を手彫りギヨシェとダイヤモンドでトゥールビヨンのダイヤルに表した。写真は、さそり座。バゲットカットのサファイアが、ダイヤルの深みのあるブルーを引き立てる。

「メティエ・ダール‒12星座へ想いを馳せて‒蠍座」限定生産。径39㎜。自動巻き。18KWGケース。価格要問い合わせ。

節目の年を記念して、メゾンでは久々となる大型のクロックでも創造力を発揮した。この「ラ・ケットゥ・デュ・タン(時の探求)」はドーム、天文時計、台座から成り、最上部のドーム内では人物像が両手を広げて時刻を示す時に144種類のジェスチャーをするオートマトンが収まる。

時計部分にはさまざまな天文表示を含む23の複雑機構が備わり、オートマトンの動きに合わせ3つの曲を奏でる音楽機構も装備。これまでの歴史の、まさに集大成。

〈VACHERON CONSTANTIN〉La Quête du temps
La Quête du temps
No.1042「時計とスタイル。」バナー