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時計とスタイル:スタイリスト・井伊百合子のケーススタディ

シャツの袖と自然に馴染むか、リングとのバランス感は絶妙か。あるいは、腕から外したときにどのように飾るのか。どの一本を選び、どう付き合うのか、そこに“スタイル”というものが生まれるのかもしれません。スタイリスト・井伊百合子が語る時計とスタイル論。

本記事は、BRUTUS「時計とスタイル。」(2025年11月4日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

photo: Local Artist / text: BRUTUS

時計は、生活に間を作るもの。一本に絞り、スタイルを構築する

「一日の中に一拍、間を作れる。息つぎをするというか、空気を変えるというか。そんな存在を身に着けていられるのがいいですよね」と語るスタイリストの井伊百合子さん。

スタイルを作り上げるプロにとって時計は、ファッションにおいても生活においても空気を変えてくれるものだという。これまでさまざまな時計をしてきたが、今は〈エルメス〉「ギャロップ ドゥ エルメス」の一本に絞っている。

ケースがシルバーの〈エルメス〉の「ギャロップ ドゥ エルメス」には、同色のアクセサリーを合わせる。チェーンは恵比寿の〈ギャラリードゥポワソン〉で自身が監修したもの。深い緑が印象的なジャケットは〈ドリス ヴァン ノッテン〉。

「それまではヴィンテージしか持っていなかったんです。数年前に展示会で見たこの時計の、モダンなのに奇抜ではないところに惹かれて。時計のデザインってすごく限定されるのに、新作でここまで素晴らしいデザインをしたことにリスペクトがあります。デザイナーのイニ・アーシボングの愛読書は『陰翳礼讃』らしく、日本的なさりげなさも感じます」

そのデザインはアクセサリー選びにも影響を与えている。

「気分によってアクセサリーを替えられるようにゴールドとシルバーどちらも持ち歩いています。でも時計を着けるときはシルバーだけ。できるだけ全身にシルバーが飛んでいるようにしたいのでリングは時計とは反対の手に着けるのがルールです」

今では、アクセサリーと一緒に〈スマイソン〉のカフリンクボックスに入れて、旅先にも常に持っていく。まさに井伊さんにとって欠かせないピースになっている。

時計とアクセサリーを収納するボックスは、〈スマイソン〉のカフリンクボックス。スタイリストの林道雄さんからの頂き物。愛用するリングやピアスは、〈カルティエ〉や〈ミキモト〉、NYのチャイナタウンで特注したものも。

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