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温泉街・熱海の裏路地にレトロゲーム機の聖地!「和田たばこ店」を知っているか

温泉観光地として名高い熱海に全国からレトロゲームマニアが集う聖地がある。それが「和田たばこ店」。店名の通りタバコ屋さんであり、駄菓子屋さんでもあるが、そのコレクションはミュージアム級。店主の和田員昌(かずまさ)さんが、その歴史とゲーム愛を語る。

photo: YUTA / text: Tetsu Takasuka

ゲームに携わるようになって60年です

和田たばこ店が創業したのは昭和28年。最初はね、親が経営する食料品店だったんですよ。それからたばこ屋になって駄菓子も扱うようになってね。私は今年で84歳になりますけどね、昔は東京でピンボールやガンゲームを扱うアメリカのゲーム会社に勤務していたんです。

でも、朝鮮戦争とベトナム戦争が終わったタイミングで会社が本国に引き上げちゃったものだから、独立してゲーム機のリース業と販売業を立ち上げました。ゲームに携わるようになって、かれこれもう60年が経ちますね。

熱海「和田たばこ店」
つい、十円玉を投入して遊んでしまう。

ここに並んでるのは、どれもちゃんと動くんですよ

お店にゲームを置くようになったのは、熱海にもスーパー、コンビニが増え、店の商品がたばこ以外販売不振になった平成12年頃のことです。最初は店頭に数台のゲーム機を置いて子供たちに遊んでもらおうと思ってね。それからどんどん台数が増えて、平成25年にお店の隣にレトロゲーム場「ちょっくらよってったら〜」を開店したんです。

35年以上前のレトロなゲーム機や70年以上前のジュークボックスを並べていますが、どれもちゃんと動きます。自分でこういったゲームを作っていたわけだから、直すのもわけないんです。

4つの倉庫に約400台。コレクターにも売りません

お店に置いてあるゲーム機は私が所有しているうちのほんの一部ですよ。4つの倉庫に400台近く保管していますから。熱海がにぎわっていた頃は、ホテルや旅館に合計800台ほどゲーム機をリースしていました。しかし、景気が悪くなって次々に閉館することになり、ゲーム機を一気に引き上げたんです。

それが今も倉庫にあるんです。修理できるように部品もたくさん保管しています。コレクターの人に売ってほしいと言われることもよくありますが、手放すつもりはありません。

熱海「和田たばこ店」

お店に置いてあるゲーム機の中には自分の会社で作ったものもあります。「A級ライセンス」というコインゲームもその一つです。スーパーカーブームに乗っかって、200台も売れました。ゲーム機を作るときは、流行ってるものや人気の漫画を参考にしましたね。

アイデアはいくらでも浮かんできました。売れるゲームで重要なのは、盤面のデザインなんです。プロのイラストレーターに頼むとお金はかかりましたが、やっぱりいい絵を描いてくれるんです。そういう絵を使ったゲーム機はやっぱり当たることが多かったですね。

熱海「和田たばこ店」店主の和田員昌さん
店主の和田員昌(かずまさ)さん。

お店には観光客も来ますが、遊びたいゲームを求めてわざわざ遠方から来てくれる人も多いですよ。ですから、どのゲームもしっかり動くように毎日のように自分で修理しています。

音を聞くだけで、機械の調子やゲームの上手い下手がわかります

60年以上、ゲーム機に携わっていますから、機械の調子が悪いと音ですぐにわかるんです。レバーを弾く音だけで、ゲームが上手い人かどうかもわかりますよ。ゲーム機について詳しく知りたい人がいたら、丁寧に教えてあげています。

こういうアナログなゲームの魅力はやっぱり頭で考えながら遊べるところですかね。ゲーム機には全部説明書をつけてあるので、それをよく読めばちゃんと遊べるはずです。でも、最近はそれも読まずに、“動かない”と文句を言ってくる人もいる。

熱海「和田たばこ店」 注意書き

今の子供たちは、あまりゲームをしに来ることはありませんね。スマートフォンのゲームにかかりきりなんでしょう。たまに来ても、遊び方がわからないとか文句を言うので、“だったら帰りな”って言っちゃったりね(笑)。

昔は駄菓子屋で悪さをする子供がいたらつかまえて引っぱたいたもんです。それも教育でしたからね。でも、今は親でさえ自分の子供を怒らない。困ったもんです。