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〈ファセッタズム〉落合宏理の大切な古着の話。アメリカの映画オタクが作ったブートのスタジャン

古着の価値観は人それぞれだ。何十年も着ている思い出の品や問答無用に好きな服。世界中から長い年月を経て、奇跡的に自分の元に辿り着いた古着たち。〈ファセッタズム〉デザイナー・落合宏理が語る、古着・愛。

photo: Shinsaku Yasujima / text: Shigeo Kanno

二つとない、はずしの存在感が自分好み

学生の頃から古着は好きでしたね。でも僕は、いわゆるヴィンテージジーンズとかスエットみたいな王道古着よりも、ちょっとズレた面白いものに興味が湧くんです。その一つがこのスタジャンですね。これは、20年ぐらい前にアメリカのブルックリンに住むアーティストの友人からプレゼントされ、大切にしてきたものです。

誰かが映画監督のジョン・ウォーターズの作品『CRY-BABY』をモチーフにオリジナルで作ったと思われる、いわゆるブート品。僕自身もジョン・ウォーターズの作品が好きだし、ファッションアイコン的存在ですが、ここまで愛情が注がれた熱狂的なアイテムには驚きしかありませんよね。

手描きのイラストを刺繍してしまうんですよ。刺繍の板を作るのにもお金がかかりますからね。究極の愛の形としてのブート。唯一の欠点は、ジョニー・デップが全然似てないところ(笑)。

今の時代、ヴィンテージ加工の技術が進化しているので古着と変わらない質感は作り出せちゃうんです。だからこそ僕には、ヴィンテージの風合いよりも、古着でしか出会えない、ほかにないデザインや間違った仕様の一着が魅力的に映るんです。

ジョン・ウォーターズオマージュのスタジャン
レザーの袖とウール素材の身頃を用いたジョン・ウォーターズオマージュのスタジャン。背中の丸いワッペンには、すべて刺繍が施されている。また、フロントの右胸には、“John Waters” と小さな刺繍入り。