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古生物学者・平沢達矢の大切な古着の話。〈リーバイス®〉501XX

古着の価値観は人それぞれだ。何十年も着ている思い出の品や問答無用に好きな服。世界中から長い年月を経て、奇跡的に自分の元に辿り着いた古着たち。東京大学准教授、古生物学者・平沢達矢が語る、古着・愛。

photo: Shinsaku Yasujima / text: Shigeo Kanno

生物学の転換期に作られたジーンズが現存する喜び

実は、私がヴィンテージジーンズに目覚めた時期と、古生物学者を志した時期が同じなんです。小学6年生の時に映画『ジュラシック・パーク』が公開されて、古生物学者という職業があることを知ってしまいました。

その1年後、世間はヴィンテージブームの中、私は初めて〈リーバイス®〉501を買いました。それは新品でしたが、以来ジーンズに熱中して20歳の時に購入したのが、この50年代初期の501XX。約20年かけ、ここまで育てました。一本だけ残せと言われたらこれを選びますね。

このXXが作られた時代は、生物学では1953年にDNAの二重螺旋構造が解明された重要な時期です。そんな生物研究の大いなる転換期に作られたジーンズが、今ここに存在することが私にはとても魅力的に感じるんです。あと、年代ごとに異なるディテールや個体差など資料としての価値もあって、研究者にはたまらない面白さがあるんですよ。

ちなみに、化石の発掘作業時にもレプリカデニムを穿いていて、古き良き古生物学者の姿を体現しています。本当はヴィンテージがいいのですが、ジーンズの稀少価値を考えると、勇気が出ませんね……。

70年代の〈ラッセル〉のTシャツ、〈リーバイス®〉501XX
右は平沢さんの一番のお気に入りの〈リーバイス®〉501XX。左は文字が気に入っている70年代の〈ラッセル〉のTシャツ。和訳すると、“マッドな博士”(MD PhDのパロディ)。東大にある平沢さんの研究室にて撮影。