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信頼できる目利きがいる器の店。岡山〈融民藝店〉

旅の目的地になる、魅力的な器の店が増えている。BRUTUSが注目したのは信頼のおける目利きが営み、店頭に立つ現代器作家のギャラリー&ショップ。彼らは、今どんな80〜90年代生まれの新世代作家に注目しているのか?器のこと、作家のことを聞いてみよう。

初出:BRUTUS No.992「器の新時代。」(2023年9月1日発売)

photo: Nobuaki Murakami / text: Mutsumi Hidaka / edit: Ai Sakamoto

先人のもの作りを次代へつなぐ、健康で真面目で威張らない器を

倉敷美観地区の程近くに1971年開業。工房を訪ねて作り手の思いを聞き、作品を届けてきた前店主・小林融子さんから2022年にバトンを受け取った。山本尚意(たかのり)さんは倉敷出身。都内で写真家として活躍していたが東日本大震災を機にUターンし、岡山県民芸振興社に在籍。

民藝を学ぼうと〈融(とをる)民藝店〉へ通った。「融子さんが大切にしていたのは、“ものは日常で使ってこそ”ということ。倉敷民藝の指導者・外村吉之介の言葉、“健康で、無駄がなく、真面目で、威張らない”精神そのものだと感じます」

その思いを引き継ぎ、山本さんが大切にしているのは安心感。日々の暮らしの中で気兼ねなく使えるものをセレクトする。1981年生まれのガラス作家・片山悟子のゴブレットは安定感があり、程よい厚みも使い手の信頼を裏切らない。

「片山さんはこの店を訪れ、〈倉敷ガラス〉の小谷眞三さんとの出会いをきっかけに作り手になった方。直接師事はしていませんが小谷さんのDNAを感じます。先人から引き継いだものを発展させ、新たなものを生み出す。守破離を期待させてくれる作家さんです」。

岡山〈融民藝店〉オーナー・山本尚意
取り扱い工房は約30組。器に加え染織や藺草(いぐさ)工芸など幅広い。