素材や色形に滲(にじ)み出る風土を感じ、鳥取に息づく民藝の心に触れる
赤瓦と白漆喰の土蔵が並ぶ倉吉の町に、田中信宏さんが帰郷して店を構えたのは2012年。きっかけは、家具職人を目指し修業していた長野での経験だった。見覚えのある木工スタンドがあり、調べてみるとルーツは鳥取。今も倉吉で作られていると知った。
外から見直してみると、鳥取は新作民藝運動とゆかりが深く、現代の暮らしに沿ったもの作りの精神が受け継がれている。なのに知られていないのはもったいないと、送る側に立つことを決意した。
もともと作り手を目指していただけに、田中さんの選択眼は厳しい。天然素材を使っていること、丈夫で長く使い続けられること、機能的でシンプル、誰の暮らしにもさらりと馴染むこと。そして何よりもの作りへの真摯な姿勢が決め手になる。
「一緒に仕事をしたいと思える作り手さんかどうかが大切だと思っています。地元・倉吉に窯を持つ福光焼2代目の河本慶さんや、国造焼(こくぞうやき)4代目の山本佳靖(よしやす)さんは僕と同世代。先代の仕事をリスペクトしつつ、新たな作風を追求し、より日常に寄り添う器を生み出している。とても期待しています」。