頓花聖太郎、136らホラー関係者が告白する、本当に怖いもの

text & edit: Koji Okano

既存のジャンルにとらわれず、怖いものを探求し続ける人々がいる。オールジャンルのホラーから、あるいは自身の研究対象から、本当に怖いものを告白。

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あらゆる錯覚や現象を駆使する、催眠術のテクニックが怖い

映画『呪詛』

監督:ケヴィン・コー/台/2022年
かつてある宗教施設で禁忌を破り、呪いを受けた女性。呪いが今度は自分の娘を襲うと知り、必死で我が子を守ろうとする。

この映画は生理的&文化的な恐怖を巧みに織り成す。ジャンプスケア、虫、集合恐怖などの生理的恐怖。村の描写、宗教儀式などの文化的恐怖。この波状攻撃を高密度に食らい続ける。最大の恐怖が催眠術のテクニック。錯覚や参加感、生理現象も駆使し、こちら側に侵食する。恐怖を司(つかさど)る器官である脳を監督にコントロールされ、あまりに怖すぎる。

オチョナンさんのビジュアルが怖い

漫画『不安の種+』

著:中山昌亮/2007〜08年
なにげない日常から少しだけ外れた場所を舞台に巻き起こる不気味な怪異をビビッドに描いたオムニバス・ホラーコミックスの傑作。

まずはそのビジュアルを見てほしい。言葉は不要、ただただ怖いという感情がストレートに湧いてくる。人間の顔に特別なパーツが付いているわけではなく、それらの位置が異なるわけでもなく。パーツの角度を変えただけで、ここまで恐怖が爆増する絶妙なバランスのデザインは、中山先生の大発明と言わざるを得ない。

作品を終始覆っている雰囲気が怖い

映画『となりのトトロ』

監督:宮崎駿/日/1988年
昭和30年代前半の日本を舞台に、田舎に住む姉妹と、子供の時にしか会えないとされる不思議な生き物・トトロとの交流を描いた作品。

『となりのトトロ』といえば数多くの都市伝説が知られているが、それとは関係なく、この作品自体に得体の知れない陰鬱さを感じ、怖くてたまらない。青々しい風景に見せかけた閉鎖的な空間、無表情な人物たち、共感する間もなく展開する物語。なぜかそう感じた子供時代の印象がいまだ消えず残っている。

何が起こってもおかしくないVR空間を歩くのが怖い

VR空間「Sad Amelia」

作者:OfficialSayon/2020年
ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」のワールドの一つ。同サービスに登録してワールド検索することでプレーできる。

「VRChat」には個人制作のVRホラーが数多く投稿されている。本作はその最前線に立つ作者による代表作の一つ。未知の空間を一人で歩く肉体的恐怖を最高純度で味わえる。お化け屋敷と違って物理法則すら頼りにならない、ある意味で究極のジャンプスケア空間だ。実況動画でも楽しめるが、できればネタバレなし・爆音で体験を!