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今、食べるべき札幌のカレーを、玉ヴァーソンが案内「札幌スパイスカレーの登場で、ご当地カレーは一段と面白く」

札幌のカレー。名店が多すぎて、「正解」を出すのは至難の業。その中で、あえて断言してみます。“今”の札幌を感じたいなら、訪れるのはこの5軒で間違いありません。

Photo: Ryoichi Kawajiri / Text: Hitomi Seki

札幌スパイスカレーの登場で
ご当地カレーは一段と面白く。

もしあなたが「カレー食べに行かない?」と地元の人に声をかければ、すかさず「何の?」と聞き返されるはず。札幌っ子にとってカレーは、「スープカレー」か「ルーカレー」で、名物のスープカレー以外は、すべてルーカレーにカテゴライズされていました。

しかし近年大阪を中心に盛り上がるスパイスカレーに端を発し、2018年1月、現状に違和感を抱いていた店主たちが、「札幌スパイスカレー」を提唱。厳密な定義はないものの、スパイス感際立つ新ジャンルの存在感も増し、今やこれほど多様性に富む地域はほかにない!といえるでしょう。

今回は多店舗展開しておらず、店主自らが作るスープカレーとスパイスカレーを選んだところ、スパイス遣いの名手であるオヤジばかりに。ひょっとするとインパクト重視の人には物足りない一皿もあるかもしれません。ただ、「長く付き合いたい」カレーであることは間違いなし!

gopのアナグラ(山の手)

カレー店の店主が食べに来るカレー。

同業者に支持される理由は「わかりやすいカレーを作らないから」と店主の久保田信さん。鶏ガラや野菜など9時間煮込んで作ったスープにスパイスを合わせる際は、スパイスの声を聞くかのように入れるタイミングや火加減で味を調整。毎年現地調達する珍しいスパイスも使いこなす。「余計なものを引いて引いて、塩とスパイス、必要最低限で作ると香り高い本物のカレーになる」。

シンプルだが奥深い、職人のなせる業は、辛さを増すほどに旨味が出る。50番以上の辛さがおすすめ。

E-itou Curry(平岸)

濃厚さと爽やかさ、180度違うルーに脱帽!

ラーメン店やスープカレー店での経験を持つ店主が満を持してオープンしたルーカレー専門店。これまでのノウハウを駆使したコラーゲンルーの代表作、元祖伊東さんのカレーは、鶏ガラ、手羽元、もみじ、豚骨、豚足など16時間以上煮込んだ白湯スープで、スパイスの辛味が際立つ濃厚カレー。

合いがけした札幌スパイスカレーのスパイシールーは、15種類以上のスパイスと香味野菜、リンゴ、マンゴー、白桃などを加えたフルーティな味わいが特徴。トッピングしたクリームチーズが爽快感を増幅する。

スープカレー店34(平岸)

伝説の味を想起させる懐かしい味わい。

開店直後から、スープカレーマニアから「黎明期に食べた懐かしい味」と評判の店。誰もが好む味噌汁を理想とした滋味豊かなスープは、鶏ガラ、昆布、カツオ、野菜だしに15種類のスパイスと醤油を加え、インパクトよりもシンプルさを追求。

“ジャンギ”とは店主・須藤卓也さんの大好物のジャークチキンを、北海道のソウルフードのザンギにアレンジしたもの。ニンニク、ショウガ、ライムなど自家製の調味液に一晩漬け込んだ骨なしの鶏モモ肉は、やみつきになること必至。

SOULSTORE(狸小路)

“映え”の哲学で、スープカレーを格上げ。

2008年オープン。「具材が画一的な印象だった」というスープカレーを、和食やエスニック料理で培ったスキルで再構築し、人気店に。そのシンボルが、器から飛び出すほど長くて太い“揚げゴボウ”。見映えはもちろん、味や食感など料理人の美学も凝縮されている。約20種類の野菜が入った旬菜カリーは、同店の真髄ともいえる一皿。

入荷状況で具材は変わるが、大根はだしで煮込んでからスープに加えるなど下ごしらえに手間をかける。メニューが様変わりする日もありSNSで確認を。

札幌スパイスカレー 黒岩咖哩飯店(大通)

札幌スパイスカレー火つけ役の一皿。

見た目はスープカレーとルーカレーのまさに中間。しかしその味は、“複雑”そのもの。8時間かけて作るルーは、スパイスと大量のタマネギ、チキンブイヨンにトマトやヨーグルト、和風だしを合わせた後、特製のガラムマサラを投入。仕上げには毎朝ホールから挽くスパイスを加熱し、香りをブースト。

札幌スパイスカレーのお約束であるカスリメティを皿の上にたっぷり散らせば、鮮烈な香りとともにスパイスの鮮度まで味わえる。チキンレッグはほぐしてルーにまぜながらどうぞ。